世界を変えるU33

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どんなに小さな声だって、
世界はかならず変えられる。

ハリス 鈴木 絵美(はりす すずき えみ)さん
Change.org 日本代表

ハリス 鈴木 絵美

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Interview Q1.どんな問題に取り組んでいますか?

「社会をよくする一人ひとりのアイデアを、世の中に届ける。」

-ソーシャルプラットフォーム「Change.org」とは、どんな取り組みなのでしょうか?

娘が通う学校にいじめ対策を求める母親から、不当な手数料を請求する銀行に抗議する消費者、さまざまな立場にある市民が、あらゆるテーマで「キャンペーン」を立ち上げ、オンライン上で賛同者を募り、署名を集めて、決定権のある者に"「変えたい」気持ち"を届けることができるサービスです。

もともとアメリカで始まったサービスで、世界約200ヶ国に住む6000万人以上の人たちが「Change.org」を利用しているんですよ。
日本では、2012年からスタートして、ユーザー数もどんどん増えています。

—具体的には、どんなキャンペーンがあるのですか

たとえば、マンガ「はだしのゲン」が、描写が残酷だという理由から、松江市内の小中学校の図書館で読めなくなったことがありました。
「はだしのゲン」を図書館に復活させ、自由に読めるようにしようというキャンペーンが立ち上がり、2万人以上の賛同者が集まりました。
2万人の賛同者たちの声は直接、松江市の教育委員会に届けられ、結果、「はだしのゲン」は、子どもたちも自由に読めるようになりました。

その他にも、レスリングを五輪競技に復活させよう、大学の休学費を減額してほしい、保育施設を増やしてほしいなど、さまざまなキャンペーンが立ち上がり、成果につながっています。

街頭で組織的に著名を集めて、政府に届ける例もありますが、一個人として意見をあげて、賛同を集めるのは難しかったと思います。
それができるのが、「Change.org」です。

—1人の意見でも、世の中に声をあげられるのですね。

「社会を変えたい、よくしたい」という思いがあっても、今は、変えられないと思っている人の方が多いかもしれません。

でも、それはもったいないですよね。
本当は、みんながもっとハッピーになれるアイデアかもしれないのに、活かされないのは、社会として大きなロスです。

社会の大事な仕組みやルールを決めるのが、すべて政府や大企業では、私たちの気持ちが反映されにくい。
本来、主人公は、市民である私たちなのですから。

たとえ1人でも、想いをもつ人を応援し、勇気づけ、少しでも早く、より簡単にその想いを届け、実現へと結びつける。
1人ひとりが自分の力を発揮できるような社会をつくるのが、「Change.org」の役目です。

「はだしのゲン」のキャンペーンでは、Changeを通じて、2万人を越える人たちが賛同の署名をしました。

Interview Q2.今の取り組みをやろうと思ったきっかけは?

「世の中は、変えることができる。」

—10年過ごしたアメリカから、帰国するきっかけは何だったのでしょうか?

帰国する4年程前の2008年頃、現アメリカ大統領のオバマ氏の選挙キャンペーンにスタッフとして参加しました。
同世代の若いスタッフたちと一緒に、新しい歴史を作っていくプロセスは、毎日がワクワクして楽しかったですね。

何より1年前には、当選の可能性が低かったオバマ氏が当選したことで、世の中は変えることができるんだ、ということを実感しました。
同時に、選挙キャンペーンを成功に導いたネットの力に大きな可能性を感じましたね。

一方で、アメリカにいると、日本人であることをつい忘れてしまうんです。
このままでは、アメリカ人と日本人のハーフである私自身のアイデンティティを失うかもしれないと感じはじめてもいたんです。

ちょうどその頃、オンラインの署名サイトとして、アメリカでいくつものキャンペーンを発信していた「Change.org」が、日本に進出するという話がありました。
アメリカのものを日本に紹介する、いわば、アメリカと日本のかけはしのような役割です。
それなら、私に適していると思ったんですね。

—ネット署名は、日本では馴染みがありません。不安はありませんでしたか?

もちろん不安はありました。
なかには、「日本では、絶対にムリだ」なんて言う人もいました。

でも、物事はうまく行かないこそ、勉強になるとポジティブに捉えていましたね。

まだ誰も知らないからこそ、いろいろなチャレンジができる。
それに、今の日本にどんな問題があって、どうすればもっと良くなるのかをいろいろな人たちと話せることは、今の日本を知るという意味でもとても興味深いです。

署名を集めても、何も変わらないこともあります。
それに対して、批判的な声がありますよ。
行動する人に対して、非難する人がどこにでもいます。

でも、すぐに結果がでないなら、動く意味がないというのは、あまりに短絡的で、社会の仕組みをわかってないと思います。
世の中はそんなに単純ではありません。

どんなに小さな声でも、直接、声を届けることには意味がある。
その積み重ねがいつか大きなうねりになると思っています。

それに、「あなたはこの意見に賛成?反対?」と問われれば、自分なりの意見を考えますよね。
自分の周りや世界で起きていることに意識が向くだけで、世の中は変わっていくと思います。

「Change.org」がスタートした頃と今とを比べると、ユーザーの数はものすごく増えています。
「Change.org」が、日本の社会から求められている証拠だと思いますね。

どんなに小さな声でも、直接届けることに意味があるんです。

Interview Q3.どんな高校時代でしたか?

「ただ、敷かれたレールの上を走っていた。」

—高校時代の頃は、どんな将来を描いていたのですか?

インターナショナルスクールに通っていました。
周りには外国人もいれば、日本人もいる環境でしたが、家庭のなかでは、アメリカの大学に行くことが前提でした。

高校生にとって、親の影響力ってすごく強いと思うんです。
いい大学は、いい人材を育てるという価値観のなか、父親がハーバードのビジネススクールに通っていたこともあって、ずっとハーバード大学を目指していましたね。どうせ行くなら、トップがいいって。

将来に関しては、両親とも、ビジネスの世界で生きていたので、弁護士になるとか、医者になるとかは思ったことはなかったです。
ぼんやりとビジネスの世界で国際的なキャリアを積むのかな、くらいしかイメージしてなかったです

と言いつつも、世界に目を向けていたわけではなくて。
学校でも、フィリピンで家を建てようといったNPO活動をしていた人もいましたけど、当時の私は、社会問題に対して、あまり関心はなかったですね

勉強や部活や課外活動を一生懸命頑張りましたが、アメリカのいい大学に入るために、いかに“いい履歴書”をつくるかを戦略的に考えていました。

—大学はハーバードのライバル、名門・イェール大学に進学します。

学術的なハーバードに比べて、イェール大学は社会性のある人が多いと言われています。
クリエイティブ系の人も多かったですね。

中国語を専攻していたので、北京や台北に短期留学したり、アカペラのグループに入って、ツアーをやったり、アルバムを出したり。
ミュージカルのグループでは、プロデューサーとして頑張ったり。
1年、1年、いろいろなことに挑戦して、充実していました。

イェール大学にいると、将来の仕事は、金融かコンサルティングか、みたいな雰囲気なんです。

それと、母が「日本では、若い女性がキャリアを積むのは難しいよ」と言っていて(笑)。
そのままアメリカでコンサルティング会社に就職しました。

—就職されたマッキンゼー&カンパニーは、世界有数のコンサルティング会社です。

コンサルティングに特別、興味があったというわけではないのですが、ビジネスから学ぶこともたくさんあるだろうと思っていました。
実際、仕事のやり方はとても勉強になりましたし、いろいろなものに触れることもできました。

ですが、要求されるレベルも高く、仕事はとてもハードでしたね。
結局、体を壊してしまい、2年で辞めてしまいました。

振り返れば、ただ、親や社会が敷いた理想とされるレールの上を走ってきただけだった気もします。
まったく違う道を選択していたら、もっと楽しかったかも、なんて思ったりもしますね。

高校生の頃は、日本の大学は選択肢になく、アメリカに進学することが前提になっていました。

Interview Q4.高校生のみんなにアドバイス!

「あなたにしか歩めない、おもしろい人生を。」

—日本では、いい大学に行くことが、一つのゴールのように捉えられています

私自身、親や社会が敷いたレールの上を走ってきました。
でも、そのレールが幸せにつながっているかは、知らされていませんでした。
そもそも、「幸せ」って、何なのか?

私は、自分にとっての「幸せ」を考えはじめてから、それまで歩んでいたレールを踏み外したことで面白い人生を歩めていると感じています。

だから高校生のみんなにも、もっと自分で何をやりたいかを考えてほしいですね。

ただ、学生時代は、社会に目を向ける余裕なんてないと思うんです。
私もそうでした。

なかなか高校生のうちに自分のコミュニティを飛び出して、情報を得ることは難しいです

まして、日本は島国ですから、外国の文化に触れる機会も少ないですし、メディアからの情報も基本的には日本語だけです。

でも、いまはインターネットがあります。
インターネットは、使い方次第で、自分の世界をものすごく広げることができる。
時には、リスクを取って、レールを踏み外して、面白い人生を歩んでほしいですね。

自分の世界が広がれば、いいことばかりじゃなく、イヤなことも知るでしょう。
世の中の理不尽な不公平さを知ることもあると思います。

そんな時に、目を背けて、無視するのか、それとも、より深く知ろうと行動するのか。その行動で、あなたの人としての品格が決まると思います。

そして世界を変えたいと思ったら、ぜひ「Change.org」にアクセスしてください。
あなたの声が、世界を変えるかもしれません。

レールを踏み外してみたら、自分の人生が広がるかもしれません。


ハリス 鈴木 絵美(はりす すずき えみ)さん
Change.org 日本代表

・1983年東京生まれ。30歳(2014年3月現在)。
・米国人の父と日本人の母の間に生まれ、高校卒業まで日本で育つ。
・米イェール大学卒。2012年、Change.orgの日本代表に就任とともに帰国。
・社会を動かすオンライン署名サイトとして、ユーザーは約200ヶ国に6000万人以上。
・サイトは、レスリングの五輪競技復帰や大学の休学費減額など、さまざまなキャンペーンに活用されている。