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栄養士の歴史を知ろう

栄養士の歴史を知ろう

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今でこそ世界各国に存在する「栄養士」ですが、栄養士が初めて誕生したのは実は日本であることを知らない人は多いのではないでしょうか。
日本で栄養士が誕生したのは約90年前、1926年にまでさかのぼります。栄養不足により健康を損なう人々が多かった時代に、“国民の食生活改善”を役割とすべく誕生した栄養士ですが、戦後の復興を経て日本の食糧事情は好転し、担う役割も時代と共に変化をしてきました。今回はそんな栄養士の誕生から現在までの歴史を紐解き、栄養士という仕事の役割や奥深さに迫ってみたいと思います。

“脚気対策”にはじまった日本の栄養改善活動

日本の栄養改善活動は、明治の中頃にはじまったと言われています。当時、“江戸患い”とも呼ばれた「脚気(かっけ※)」が流行し、明治から昭和初期にかけて年間1万人~2万人の死者を出していましたが、脚気の原因がビタミンB1不足ということは解明されておらず、「伝染病」と考えられていました。さらに日露戦争では陸軍で25万人もの脚気患者が出るなど被害は拡大し、その惨状を目にした海軍軍医総監 高木兼寛は、米食と麦食による比較実験を実施。麦食の場合に脚気が激減したことを突き止め、海軍では兵士の食事改善がおこなわれたそうです。これが我が国における、栄養指導の先駆けとなりました。

※ビタミンB1不足により起こる疾患で、全身の倦怠感、食欲不振、足のむくみやしびれなどの症状があらわれる。ビタミンB1は穀類の胚芽や糠に多く含まれるため、精製された白米はビタミンB1の含有量が玄米や麦よりも少ない。

医学博士による栄養研究所の設立

1911年、アメリカで栄養学を研究していた医学博士・佐伯矩が帰国し、国民の食生活改善の重要性を唱えるとともに、1914年には世界初の「栄養研究所」を設立。それまで日本では、栄養は生理学や病理学、衛生学などの片隅で論じられるに過ぎないものでしたが、それを栄養学として確立したのが佐伯博士だったのです。同研究所が創設された頃は、食品に含まれる栄養分の分析や、「何を、いつ、どれぐらい食べたらいいか」といった研究がおこなわれていたそうです。また佐伯博士は、パン製造法の改良、雑穀食の奨励、学校給食の実施にも貢献しました。

栄養学校の設立と栄養士の誕生

つづいて佐伯博士は、1925年に「栄養学校」を設立。栄養指導者の養成を開始しました。翌年には、同学校の第一期卒業生である15名が「栄養技手」という称号を与えられ、県庁・工場・病院・学校・刑務所などで勤務をはじめました。彼らこそが「栄養士」の第一人者であり、「栄養士」の歴史がここからスタートしたのです。
1933年には「家庭食養研究会」(のちの女子栄養学園→女子栄養大学)が、1939年には「食糧学校」がそれぞれ設立され、栄養学の普及&栄養・調理・製パン・缶詰など、当時の食生活全般にわたる指導者の養成に一役買うようになりました。
日本が戦争に突入すると、軍隊や軍需工場のための大規模な給食施設が増えたことにより栄養士が多く求められる状況にあったことも、養成学校の拡大の一因だったようです。

第二次世界大戦後の食糧難と栄養士

第二次世界大戦に敗戦した日本では、戦時中から続いた深刻な食糧不足によって、多くの人々が飢えや栄養失調に苦しんでいました。そんな中、敗戦後の限られた食料を有効活用し、上手に栄養を摂取する方法を提案したり、国民の栄養調査を実施したりと、栄養士の役割と活躍の場は急速に広がっていったそうです。
1947年には新憲法(日本国憲法)のもと、「栄養士法」が制定され、栄養士の社会的な位置づけが確立されました。同時に、国家資格として公的に認められた「栄養士」が誕生し、その歴史は現在に至ります。

現代における栄養士の役割

戦後の復興と経済的発展を経て、かつて栄養失調状態にあった日本国民の健康は、一定の水準を保てるまでに向上しました。そんな時代背景とともに、1982年には行政管理庁から「栄養士免許制度の廃止」が提言されるなど、栄養士は国家資格はく奪の危機に瀕した時期もあったと言います。しかし、高齢化社会の到来や豊かな食生活が引き金となる生活習慣病の増加にともない、“健康維持”を目的にした栄養指導の必要性がうたわれるようになると、栄養士の役割の重要性は再認識され、栄養士免許も存続されることとなったのです。

このように栄養士とは、その役割や働き方が社会の動きと大きく連動する職業です。この先、数年後、数十年後に世の中がどう変わっているかは、正直誰にもわかりません。しかし人々が生きていく限り、“健康維持”は何より重要視される課題といっても過言ではありません。特に日本は、保育所や幼稚園、学校、会社、病院、老人福祉施設とあらゆる生活の場で栄養士が働き、さまざまな人の食と健康を支えています。生まれてから死ぬまでともに歩んでいく人生の伴走者として、そして時代の伴走者として、この先も栄養士は引き続き求められていく存在だと言えるでしょう。

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