工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!

理系の代表的な学部の一つが工学部。

工学部ではどんなことを学ぶの?理学部や理工学部とどう違うの?目指せる資格や就職先は?

そんな疑問を大学の工学部の教授に聞いたので、これをチェックして工学部について詳しくなろう。

【今回教えてくれたのは】
工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!
佐藤之彦先生
千葉大学 大学院工学研究院 教授
専門は電気電子工学、特にパワーエレクトロニクス。
電力をエネルギーの損失を発生することなく自在に制御するための技術であるパワーエレクトロニクスの教育・研究に取り組んでおり、パワーエレクトロニクスによる持続可能なエネルギー社会の実現を目指している。

工学部とは?

物理学や化学などの自然科学や数学などを基礎として、社会に役立つものを創造するための学びができるのが工学部。

資源や環境、経済などへの影響も考えながら、ものづくりによって、より豊かな社会をつくり出すための力を身につける。
「スマホやパソコン、家電、電車など、社会を支えるあらゆる人工物は工学によってつくり出されたものです。
 
ものづくりによって社会の課題を解決することを目的に、人々の生活をより便利にしたり、これまでできなかったことを可能にしたりと、世の中になかった製品や手段、設備やサービスなどを新たに生み出して時代を切り拓き、未来をつくる学問だと言えます」。

工学部って何を学ぶところ?

ものづくりの土台となる知識として主に必要なのが、数学、物理学、化学、生物学。

そして、その知識をもとに、扱う機械や部品、材料などの性質を詳しく理解しながら、実際に実験や分析などを繰り返し、知識や技術、研究の手法を身につけていく。

社会の課題を解決する新たなものを生み出すための独自のアイデアや視点を磨くことも大切だ。
「ものづくりに直結する基礎的な知識だけでなく、『ものをつくるとは?』『つくったものが与える人や社会、環境への影響は?』といった、ものづくりに携わる者として身につけておきたいモラルや心構えなど、倫理的な観点も含めた授業も工学部全体として設定されていることが多いですね。

自分たちが生み出したものが社会にどんなインパクトを与えるのか、エネルギーや環境問題に影響がないか、想定していない使われ方によって危険が起こらないかなど、ものづくりをするスタートとして、まずそういった観点を身につけることも大切にしています」。

文系から工学部に進学できる?

工学部は理系の分野だけれど、文系からは進学できないの?

佐藤先生に聞いてみた。
「ものづくりにおける基礎として、数学、物理学、化学などの知識が必要となり、受験の際にこれらの科目が必要となるので、理系科目が得意でないと工学部に進学することは難しいと言えます。

ただ、ものづくりは、つくって終わりではありません。

つくったものは人間や社会とのかかわりのなかで使われていくので、『人』を対象にした学問である文系のセンスも非常に大切です。

また、未来を切り拓くためのものづくりは1人ではなく、いろいろな分野の人たちと協力しなければ実現できません。

そうした観点からも文系のセンスや感覚をもち合わせた人にも工学にかかわってもらう必要があると私は感じています。

文系から理系の勉強をするのは大変なことだと思いますが、興味があればぜひチャレンジしてみてください」。

工学部の主な学科・分野は?

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※技術で社会を豊かにする、さまざまな学びを得られる

工学部がかかわる分野は幅広く、大学によって学科の名称や学べる内容は多岐にわたる。

佐藤先生も「さまざまな分野が複合的に絡んでいるのが工学部の特長です」と話す。
「ものづくりは一つの分野だけで成り立つものではありません。

例えば、ロボットづくりでは、ボディを開発するのは機械工学、それを動かすコンピュータ(電子回路)を設計するのは電子工学、ロボットにインストールするプログラムを開発するのは情報工学と、さまざまな分野の学問がかかわり合っています。

そのため、大学によってはいくつかの分野を複合した学科を設置し、コースで分けていることも多いですね。

また、近年は数学や統計学、プログラミングなどの理論を利用して情報を収集・分析し、そのデータをビジネスに活用する『データサイエンス』に注目が集まっています。

これまでは情報工学科に含まれることが多かったのですが、世の中の流れから、データサイエンスに特化した学科を新たに設置する大学も増えています」。
ここでは主な学科を紹介するので、この情報をもとに自分が希望する分野が学べる学科はどれなのか、工学部のある大学を調べてみよう。

情報工学科

情報工学科では、コンピュータやソフトウエアの理論や技術を学び、高度な情報処理技術を身につけていく。

例えば、スマホや家電製品、自動車、鉄道、建築物など、身のまわりのさまざまなものにコンピュータが組み込まれている。

そのコンピュータ技術やシステムを学び、新しいサービスを開発したり、社会問題を解決したりと、コンピュータを人々の暮らしにどう役立てるかを研究する。

現代社会のニーズが高まっているAIなどのIT分野も情報工学科で学ぶことができる。

情報工学について詳しく知る

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電気・電子工学科

電気系の学科として主に電気工学科や電子工学科があり、大学によってはいずれかの学科が設置されていたり、電気電子工学科として設置されていたりする。

電気工学科では、エネルギーとしての電気の効率的な活用法を考える分野、電気回路や半導体を研究する分野、インターネットや光通信など情報の伝達技術を学ぶ分野など、電気に関する幅広い領域を研究する。

電気全般を総合的に学び、より効率良く、安全に、簡単に電気を利用できる方法を探求し、新たな技術を生み出すことに挑戦していく。

一方、電子工学は電気工学や情報工学のベースとなる学問で、いずれの分野にも応用できる知識や技術が身につく

電子工学科では私たちの生活に欠かせない電子の基礎や応用を学ぶ

電子レンジやテレビ、洗濯機などの生活家電、スマホやタブレットなどの通信機器、自動車や航空機などの輸送機器、心電計・ペースメーカーなどの医療機器といった、電子回路を利用した製品はさまざま。

そうした電子機器のしくみを理解し、ものづくりに必要な知識や技術を学ぶことで、生活に役立つ製品やサービスをつくるための技術を研究する。

電気工学について詳しく知る

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機械工学科

今の生活をさらに快適にするなど、人々の役に立つ機械をつくる技術を学ぶのが機械工学科

時計やカメラ、スマホなどの身のまわりで使う機械から、自動車や電車、航空機などの移動機械、工場などで使われるような生産機械、輸送機械、医療機械など、多種多様な機械があり、学ぶ内容も多岐にわたる

機械をコントロールするコンピュータの知識を得ながら、実際に自分で機械の設計図を書いたり、機械に使われる金属材料を加工して部品や工具をつくったり、材料や部品の機能を調べたりと、社会問題を解決する機械をデザインするための力を身につける

機械工学について詳しく知る

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応用化学科

応用化学科では、化学の知識を使いながら新しい素材や医薬品の開発をするなど、生活をよりよくしていくために化学を使ったものづくりを行う

主に有機物・無機物・高分子・低分子などを取り扱うことが多く、物質の性質を操作して新しい物質をつくり出し、それを身のまわりの製品に実用化できるところまでを学んでいく

化学繊維やプラスチック、半導体、フィルム、ポリマー、薬品、食品など、身近で日々の生活に密着した製品づくりを担う分野だ。

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建築学科

建築学科では、設計、構造、施工、材料、設備、環境など建築にかかわる幅広い分野を学ぶ

建築に必要と言われる、動線計画や設備などの「機能性や快適性」、災害などから人の命を守るための「構造・耐久性」、そして「デザイン性や芸術性」と大きく3つの要素について学んでいく。

一級建築士や二級建築士、木造建築士などの資格取得を目指す人も多い

大学によっては、建築系の学科の中に都市工学や土木工学に関する学科やコースを設置していることもある。

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【工学部の先輩に聞いた】なぜ工学部を選んだの?

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※先輩たちのリアルな意見を見てみよう

実際に工学部で学んでいる先輩たちにアンケートを実施。

まずは、なぜ工学部を選んだのか、その理由を具体的に聞いてみた。

小さなころから工学部に関連する分野に興味があった、就きたい職業があるという人から、将来の具体的なビジョンがないからこそ進学したという人までさまざまな意見があがった。
【興味があった】

プログラミングに興味があり、複数のプログラミング言語を学べる学科であったから」(工学部情報工学科 19歳 神奈川県)

「高校1年のころにロボット系に興味をもち、オープンキャンパスで毎年講義でロボコンをしていることを知り、希望した」(工学部知能工学科 22歳 岡山県)

身のまわりの社会基盤などを構築することに関して、世界でもトップクラスの研究を行えると知り、高校時代からあこがれをもっていた。また、この学科は理系にしては比較的幅広い分野を学ぶことができるということも決め手の一つになった」(工学部地球工学科 20歳 京都府)

ドローンに興味があり、北海道内でドローン開発やイベント、大会に参加できるような大学を探していた。また、ドローンに関連する情報技術やソフトウエアなどを高度に学びたかったから」(工学部電気系学科 20歳 北海道)

「小さなころからロボティクスやプログラミング、アルゴリズムに興味があり、また数学や科学の知識を活用したいと感じたため選択」(工学部電気電子工学科 19歳 宮城県)

医薬品について学びたいと思っており、薬学部とは違う工学的視点で薬について学べるというところに魅力を感じたため選んだ」(工学部医薬品工学科 22歳 富山県)

小さいころからものづくりが好きだったため、それといえば建築のイメージが自分のなかであったから」(工学部建築系学科 21歳 東京都)

「もともとは一番向いていない分野だと思っていたが、高1の進路学習にいらっしゃったOBの女性建築士の方の話を聞き興味をもった。ガッツリ理系、作業着、男、といったイメージからデザイン、ニーズ、模型、プレゼンなどのイメージへ変化したことが大きかった」(工学部土木建築学科 18歳 熊本県)

「中学生のころ発展途上国の水の衛生問題に興味をもち、インフラについて考えるようになった。土木はインフラ以外にも環境やまちづくりなど幅広く学べるため」(工学部土木工学科 20歳 福岡県)

【今後の世の中で必要な学びと感じた】

「中学生のころからパソコンをよく使う機会があり、通信のしくみについて興味をもったことがきっかけで目指しました。また、近年スマートフォンをもっていない人はほとんどいないほど情報化社会になっており、学んでおいて損はないと判断したことも理由の一つです」(工学部情報コース学科 22歳 香川県)

ITなどの分野が台頭している現代社会において、情報の分野や電気の分野の2つを学習できるというこの学科のオープンキャンパスに訪れて、大変に魅力的であると感じたため」(工学部電気電子情報工学科 21歳 神奈川県)

【分野の勉強が得意】

「高校のとき受験に向けてたくさん化学を勉強していて、ほかの科目も勉強していたが、化学の得点が一番安定したから。よって化学系の勉強をしてもついていけると思ったから」(工学部化学系学科 22歳 東京都)

「将来仕事としてやりたいことが当時みつかっておらず、とりあえず数学や物理が得意だったため構造系の学科を選択した」(工学部環境社会デザイン学科 21歳 埼玉県)

「中学のころから数学と理科が好きで得意だったため、何となく理学部を志望していた。しかし、高2の夏にオープンキャンパスに行って、理学部より工学部のほうにやりがいを感じたのが決め手になった」(工学部建設社会工学科 23歳 福岡県)

【関連した仕事をしたい】

「将来、自動車や飛行機をつくる仕事をしたいと思い、選択した」(工学部機械工学科 18歳 京都府)

「自分は以前より地元の役に立ちたいと思っており、デジタル化が進むなかで情報系分野に興味があった。いろいろ調べてみると学部教授が交通の利便性が上がるシステム開発をしていて自分もこのようなことがこの学部でできると思ったことが決め手になった」(工学部電気情報系学科 19歳 鳥取県)

鉄道に興味があり、そういった関連に就職したいと感じた。オープンキャンパスで教授の話を聞いて行きたいと感じた」(工学部電気電子工学科 20歳 東京都)

「高校生になり、今までしてこなかったメイクをするようになった。そうしたら今まで自身に感じていたコンプレックスが少し軽減された。このことから化粧品で自身の顔で悩んでいる人を手助けできるのではないかと感じ、化粧品開発メーカーに就職している人が多いこの学科を選択した」(工学部生命化学科 20歳 神奈川県)

「高校からデザインを学び、デザイン関係の仕事に就きたいが、技術が足りないうえ、自分にできる具体的なデザインをわかるようにするため。工学部なのは社会の役に立つ商品をつくれるようになるためで、オープンキャンパスで、具体的な話を聞いたのも決め手になった」(工学部デザイン学科 19歳 東京都)

【やりたいことを探したい】

「この学科はあまり特定したものはなく物理全般に触れるところがいいと思いました。自分はあまり夢というものが学生時代はありませんでした。この学科に行ってみてやりたいことを探そうと思いました」(工学部応用物理学科 18歳 福井県)

【工学部の先輩に聞いた】工学部の雰囲気は?

次に工学部の雰囲気について聞いてみた。

大学進学や資格取得を目指す人など、まじめな人が多いという意見や、好きな分野の学びを楽しんでいる人が多いという意見も多数。

実験や実習など、座学だけでなく実際に自分の手を動かす授業が多い分、大変だという意見もみられた。
【まじめな人が多い】

「専門的な学習を行うため復習や予習に積極的に取り組み、教員に質問を何度も行うといった学習にまじめな学生が多い」(工学部電気電子情報工学科 21歳 神奈川県)

「落ち着いていてまじめな人から元気ではしゃいでいる人までそれぞれで、いろんな人がいるが、みんな平均的な大学生よりはまじめなほうだと思う。テストが大変なので、勉強をしている時間が長かったり、授業にちゃんと出ている人が多い」(工学部化学系学科 22歳 兵庫県)

「資格取得や就職、進学などを真剣に考えている人たちが多くおり、自らの将来のことをしっかりと考えている人たちが多くいる」(工学部機械系学科 22歳 愛媛県)

【大学院進学を目指す人が多い】

大学院への進学を基本路線としている人が多い印象を受けている。まわりの人のなかには、中高とずっと勉強してきたという人も数多くいる。そのためか、比較的自由で、サークルなどの大学生活を満喫している人が多い。入るのにある程度の努力が必要ではあるが、大学を思いっきり楽しみたい人におすすめです」(工学部地球工学科 20歳 京都府)

大学院への進学も多い。目標に向かって努力できる堅実タイプにおすすめ」(工学部知能工学科 22歳 岡山県)

【資格取得のサポートがある】

「橋や河川、まちづくりなど幅広く学べる。コツコツと努力する人もいれば、旅行によく行くアクティブな人も多い。国家公務員試験に対するサポートが厚い」(工学部土木工学科 20歳 福岡県)

国家資格の取得を推奨されている大学もあります。授業はその資格を取るために必要な知識をつけられるものが多いため、普段の授業をきちんとこなせていれば、特別な勉強を長時間することなく、基本情報技術者試験の資格くらいは取れるのではないでしょうか」(工学部情報コース学科 22歳 香川県)

多くの資格が取得できる学科で、目標をもって学ぶことができる」(工学部機械電気工学科 19歳 大分県)

【幅広い学びができる】

「精密工学科は加工・光学・制御・画像処理など幅広い分野の授業がある。そのため、学科の授業を受けたうえで、自分の興味や好みに合う分野を選ぶことができるので、自分が何について研究をしたいか決めきれてない人におすすめできる」(工学部精密工学科 22歳 千葉県)

工学部ならデザイン以外の道にも使うことができる技術力を得られる」(工学部デザイン学科 19歳 東京都)

「医薬品について学びたい人はもちろん、化学・生物・物理と幅広い勉強ができるのでそのような勉強がしたい人や努力ができる人におすすめ」(工学部医薬品工学科 22歳 富山県)

【分野の学びを楽しんでいる】

「もともとパソコンやテクノロジーに興味がある人が多く、自作のプログラムを楽しんでいる人もいる」(工学部電気電子工学科 19歳 宮城県)

「比較的数学や物理が好きだったり、興味をもっている人が多い印象。単位を取っていけば資格なども取ることができるため、将来技術者などに興味がある人にはおすすめである」(工学部電気システム工学科 22歳 宮崎県)

「学科内の雰囲気はとても馴染みやすい環境です。特に車好きが多いです。この学科におすすめな人は機械に興味がある人などが良いのではないかと思います」(工学部機械システム工学科 20歳 広島県)

実習実験が1回生から充実しており、気軽に教授に聞きにいける感じがある」(工学部電気情報系学科 19歳 鳥取県)

【研究や課題が大変】

研究があるので、バイトもあまりしてない人が多い」(工学部機械系学科 21歳 熊本県)

建築に進むとなるとかなり大変らしく、遊びやサークルに打ち込むというよりは学校にこもって作品をつくるという感じ。集中してものづくりに励むのが好きな人、達成感を得たいという人におすすめ」(工学部土木建築学科 18歳 熊本県)

【自分の意思をしっかりもつ】

「ゼネコンや公務員、建築士や技術者など幅が広く、自分で考えることが重要になる。ただ何となくの気持ちでいる人にはおすすめできない」(工学部環境社会デザイン学科 21歳 埼玉県)

工学部の授業・研究室の内容は?

工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!

※実験や実習の機会が多いのが魅力

どの学科においても、1~2年次で基礎的な分野を学び、3~4年次で研究室に所属して、自分の関心のある分野の学びを深めていくことが多い。

数学、物理学、化学などをベースにした座学だけでなく、機械を分解したり、実験や実習を行ったりと早い年次から実際に手を動かすことで、ものづくりの基礎を身につけていくのが工学部の特長と言える。
「大学によって異なりますが、年次が上がるにつれて学びがステップアップし、プロジェクトなどでチームや個人でそれぞれのアイデアをもとにものづくりを行う機会が増えていきます

3年次以降は研究室に入り、ものづくりを通じて得た学びを卒業研究としてまとめたり、建築系の学科では卒業設計に取り組んだりもしていきます」。

情報工学科

情報工学科では、情報技術の基礎となる数学、物理学を学びつつ、プログラミングの基礎も身につけ、実際にシステムを操作しながらロボットやゲームソフトのしくみを学んでいく

年次が上がるにつれて、より高度な数学や情報処理技術を学び、それらを応用してAIや音声・画像認識など最先端のテクノロジーへと学びが展開していく。

3年次以降では研究室に所属し、ロボット技術や暗号化技術、インターネットのデータベース技術、プログラミング教育など自分の関心のある分野の研究を深める。

電気・電子工学科

電気工学科では主に1年次で高校で学んだ物理学や数学を復習しながら、電気工学の基礎を固めていく

電気や磁気について学ぶ電磁気学、基本的な回路のしくみを学ぶ電子回路理論、電気の理解に欠かせない電気数学など、座学に加えて実験や実習も行いながら電気の基本的なしくみや扱い方を身につける

電気工学には、電力・エネルギー、電子・材料・エレクトロニクス、情報・通信、計測・制御、計算機などの専門領域があり、これらの基本を学びながら、3年次以降は研究テーマを決めて学びを深めていく。

電子工学科では、最初に数学や物理学とともに、電子工学の基盤となる電気回路のしくみや、電気・電圧とは何かといった基本を学ぶ

次に情報工学の基礎となるコンピュータ設計や情報処理、データ解析を学んだり、実験を通して電子部品のしくみや電気・電子の特性を理解したりしていく。

研究室では、ロボット制御、半導体、通信・アンテナ、信号処理など、より専門的な学びを行い、自分でプログラミングをして機械を動かすなど、自身のアイデアを生かしながらものづくりの現場を実体験して研究を深める

また、AIにかかわる場合は幾何学、代数学などの高度な数学の知識や統計学、情報理論、心理学なども学んだり、医療分野に携わる場合は医学や生理学などの知識を身につけたりと、研究分野によっては工学以外の分野の知識も必要となる。

機械工学科

機械工学科については、機械を分解して構造や動作原理を確かめたり、機械システムを企画・デザイン・設計・加工・組み立てる体験をしたりと、早い年次からものづくりを経験して現場感覚を養う学校が増えている。

大学によって異なるが、製品を形にするための機構開発や設計手法を研究する「デザイン・設計系」、自然エネルギーの研究やロボットなどをつくるエンジニアを育てる「エネルギー・制御系」、工業製品などの新たな材料や加工方法を開発する「生産技術系」と、大きく3つの分野に分けることができ、年次が上がると、より専門的な分野に絞って学んでいく。

応用化学科

1年次では、無機化学、有機化学、物理化学、分析化学など化学研究を進めるうえで必要になる基礎科目を学ぶ

座学に加え、早い段階から実験科目を多く設けている大学が多い

仮説を立てて実験を行うことを繰り返し、実験のしかた、注意点、条件の変え方などを学びながら新しい物質を生み出すための訓練を行う

3年次以降になると研究室に配属され、毎日実験を行いながら学びを深めていく

建築学科

建築学科では、建築史、建築意匠学、建築計画学など建築のあり方などを学ぶ「計画系」、コンピュータを利用して耐震構造などの構造力学や構造材料を研究する建設材料学などを学ぶ「構造系」、照明、音響、空調を研究する建設環境工学などを学ぶ「環境系」の3分野を基礎としている。

建物を建てるにあたり必要となる法学の知識、建築物が担う経済的役割を考えるための経済学の知識、まちづくりや環境、エコロジーの知識、また、人々のコミュニティーの場となることをふまえて社会学や心理学の知識など、理系・文系の垣根を越えたマルチな学問を学ぶ必要がある。

座学に加えて、製図や模型づくり、コンクリート強度や測量などを行う演習・実習なども多く、学科によっては設計課題があり、卒業時には論文のほか卒業設計を行うことも

【工学部の先輩に聞いた】おすすめの授業は?

工学部の先輩たちに、おもしろいと感じている授業についても聞いてみた。

興味深い知識を得られる座学はもちろん、実験や実習などもあって楽しそう。
<情報工学関連の授業>

画像処理工学という授業がおすすめである。画像処理の基礎部分がしっかりと書かれている本に合わせて授業が進むため、初心者でもおいていかれることなく、画像処理について学べる。また、画像処理を行うコードを自分で書く課題もあるので、学んだことを実践する機会もある」(工学部精密工学科 22歳 千葉県)

「人工知能の授業。巷で噂になっている人工知能とは一体何か、技術的な視点で知ることができます」(工学部情報コース学科 22歳 香川県)

プログラミングの授業。毎回新しいことを覚えることも多いが、これが実生活に役立っているのだと考えると、とてもおもしろく、やりがいをかなり感じる」(工学部物質材料学科 20歳 熊本県)

Javaプログラミングの授業。自分でプログラミングをしてエラーなく実行されたときの快感がすごい。エラーが起きてもそれを探してほかのやり方をみつけることが楽しい」(工学部情報工学科 19歳 神奈川県)

<電気・電子工学関連の授業>

「環境とエコロジー。電気、電子工学にも通ずるシステム要素の考え方や社会での技術の応用例も学ぶことができた」(工学部電気電子工学科 19歳 宮城県)

「物理実験学演習。力学・波動・電気・情報系などさまざまな分野の実験ができ、レポートの書き方のコマも設けてあるのでレポートの正しい書き方をしっかり習得できることがメリット大」(工学部電気情報系学科 19歳 鳥取県)

実験などは普段の授業で習っていることが、実際にどのように使われているのかなどを確認しながら行うことができるため、おもしろさを感じる場面もあるように感じる」(工学部電気システム工学科 22歳 宮崎県)

「電気電子発展ユニット。各々が希望する研究室に所属し、教員ごとに異なる研究や学習を行うという講義。より専門的な分野に踏み込んだ学習が行えるほか、教員との距離が近いため疑問に思ったことなどをすぐに質問でき、理解を深めることができる」(工学部電気電子情報工学科 21歳 神奈川県)

<機械工学関連の授業>

「工学の基礎から学ぶことができるため徐々に学べるのがいいところであると思う。また、プログラミングや制御なども自身で選択することで好きなことを学べるので良いと思う」(工学部機械系学科 21歳 石川県)

「ロボット知能化演習。3人1組になりロボットをそれぞれ作成し8週めの講義の日に競い評価される」(工学部知能工学科 22歳 岡山県)

「線形代数という授業がおもしろいと思う。内容はベクトルと行列の2つ。ベクトルは高校でしているのとたいして変わりない。行列というのは連立方程式を数字だけで表したもので、難しそうだが意外と簡単。『1式を2式に代入する』とか説明も書かなくていいから楽」(工学部機械電気工学科 19歳 大分県)

「おすすめの授業はない代わりにすべての授業がとても楽しく、やりがいがあります」(工学部機械システム工学科 20歳 広島県)

<応用化学関連の授業>

有機化学の授業が一番楽しいです。これまで高校で学習していたところでは、不十分なところも多く、完全に納得することができていなかったこともありましたが、大学で軌道などの概念を学び理解が深まったと思います。それだけでなく、新しい知識も得ることができました。薬学の分野にも通ずることがあったため、迷っている私にとっては考える猶予ができて良かったなぁと思っています」(工学部化学バイオ工学科 20歳 愛知県)

生化学実験。日常の生活では絶対にできない専門的な器具、薬品を用いた実験ができるから」(工学部生命化学科 20歳 神奈川県)

「基本、人体系の授業と有機化合物系統の授業は教授の実体験や参考になる例がかなり多いので頭に入りやすく興味ももちやすい」(工学部化学生命工学科 20歳 岐阜県)

「薬理学、再生医療工学薬理学は、薬がどのように作用するのかを学ぶことができ、おもしろかった。再生医療工学は、最近注目されている再生医療について学ぶことができ、興味深かった。香水ゼミは人気が高く、私は受講できなかったが、香りについて学ぶことができ、香水をつくることも行っていたそうでとてもおもしろいと感じた」(工学部医薬品工学科 22歳 富山県)

安全や環境に関する授業が聞いていて楽しいし、気が引き締まるような事故を例にして話してくれるのでタメになります」(工学部化学系学科 22歳 東京都)

<建築学関連の授業>

「設計製図の授業。自分が出した案に対して先生がスタディをしてくれて、自分では気づくことのできないさまざまな角度から指摘をしてもらえる。また、講評会で同じ学部の人が自分よりすごい発表をしていると刺激をもらえる」(工学部建築系学科 21歳 東京都)

実社会で現在進行しているまちづくりに参加させてもらう授業や、卒業生の方とお話をして、就職の助けになる機会などがある」(工学部土木工学科 20歳 福岡県)

「おもしろい授業は構造実験の授業。パスタを用いて橋をつくり強度を計算してグループで競うということをする。また、現場見学や工場見学などに行けるのでただ座って授業を受けるよりも楽しい」(工学部人間生活学科 21歳 広島県)

「基盤強化プロジェクト実習。自分たちが設計したものを自分たちで建てることがとても身になりいい経験になった」(建築都市工学部住居・インテリア学科 20歳 福岡県)

「1年の4月から、さっそくデザインの演習の授業が始まるが、これが一番おもしろい。手書きパースの演習やCADソフトでモニュメントをデザインしたりする。最中は精神的にものすごくきついが、真剣に取り組む分、教授からもらえる高評価がうれしい。ほかの学部では味わえない達成感が得られる」(工学部土木建築学科 18歳 熊本県)

「都市計画工学というとものづくりがメインに感じるが、工学の世界でも交渉術やそのための知識、世の中のしくみは理解しておく必要がある。それらを網羅しているのが都市計画の授業」(工学部建設社会工学科 23歳 福岡県)

<その他の授業>

「水理学。川などの身近な自然現象を、数式化して頭の中で理解することができると、視点が広がった気がして不思議な感覚になるから」(工学部地球工学科 20歳 京都府)

放射線の生物影響と防護の授業はとてもおもしろいと思いました。この授業は個人的に内容自体が好きで放射線を扱ううえでどのように気をつけたらいいのか、悪いイメージしかない放射線ですがいい扱いをすればとても便利だと思います」(工学部応用物理学科 18歳 福井県)

「デザイン基礎。さまざまな材質で魚をモチーフとした立体物を制作する授業。材料とモチーフが決まっているだけなので、表現は自由で楽しく、人によって表現の違いが見られおもしろく学べるから」(工学部デザイン学科 19歳 東京都)

「前期は課程が決まっていなかったので、さまざまな課程と授業を受ける工学概論がおもしろかった。機械工学、情報、電気、生物、建築などいろいろな講義を聞けて楽しかった」(工学部情報知能工学課程 19歳 愛知県)

【工学部の先輩に聞いた】工学部の楽しいこと&つらいこと

工学部の学びのなかでの楽しさはもちろん、つらいことも先輩が教えてくれた。

好きな分野であればとことん突き詰められる楽しさがある一方で、課題や試験は大変そう。
<情報工学関連>

実験で思いどおりの結果が出たときなどは楽しさを感じることもあるように思う。しかし、その実験結果をまとめるレポートはかなりの枚数になることもあり、大変である」(工学部電気システム工学科 22歳 宮崎県)

「楽しいこととしては少しおもしろいことを授業中につくったりして、とても楽しい。大変なこととしてはプログラムにエラーが出たとき。これほど大変なことはない」(工学部情報系学科 22歳 茨城県)

「与えられた課題に対して自分でプログラミングを行い、実行結果が正しかったときに爽快感があり楽しい。大変なことは特になく、ほかの学科からも羨ましがられるほどの課題の少なさで逆に心配になるレベル。一つあげるとしたら、授業は遅れた人に合わせないのでついていけなくなったら終わりです」(工学部情報工学科 19歳 神奈川県)

課題が多いことと、テストが期末のみならず中間もあること」(工学部情報知能工学課程 19歳 愛知県)

<電気・電子工学関連>

楽しいことは同じことに興味がある仲間が多い点。アルゴリズムの授業では教え合うことで理解を深められた。大変な点は課題の量。学ぶ内容が幅広く量も多いため計画性がないときつい」(工学部電気電子工学科 19歳 宮城県)

「専門的な器具を扱った実験を行い、さらに実験についてのレポート作成を行うことで、実験の際に生じた現象について理解を深めることができ、知識を身につけることは楽しいと感じる。大変なのはやはり課題が多いこと。実験レポートを提出しないと単位をもらえない授業もあり、ほかの授業と合わせて計画的に取り組まないと単位を落としてしまうという可能性が大きい」(工学部電気電子情報工学科 21歳 神奈川県)

実験実習で同じ学部生と教え合って課題をこなしていける。話を重ねていくことで仲も深まる。大変なのは難易度が2回生から飛躍的に上がる。コマ数も多いし試験も難しいので復習を重ねないとひどいめ(単位を落とす)に遭う」(工学部電気情報系学科 19歳 鳥取県)

<機械工学関連>

グループディスカッションや、仲間と共同で完成させるものなどがあるので大変ではあるが楽しいし、その都度、グループになった人と友達になれる」(工学部機械系学科 21歳 石川県)

上級生、下級生と共同で行う授業が大変です。年の違う人とかかわるので多くのことを考えなければならないので難しいです。しかし、たくさんのことが学べるので良いことだと思います」(工学部機械システム工学科 20歳 広島県)

「自分の興味がある学部・学科を選択したので、講義は普通に楽しい。いろんな趣味をもった仲間がいるので、楽しい。大変なことは課題を出さなければ課題点が引かれる。提出書類には必ず期限があるので、遅れないように」(工学部機械電気工学科 19歳 大分県)

今まで興味を示してこなかった分野についても授業を受けると、実はとてもおもしろかったということがよくあり、それはとても楽しいと感じる。英語に関する授業が多いことは人によっては大変だと感じると思う。英語の論文を読んで、それについて英語で発表したりなどの機会がある」(工学部精密工学科 22歳 千葉県)

<応用化学関連>

生物、化学系の実験がたくさんできる。学部4年では毎日学校にきたら何かしらの実験をする」(先進工学部生命システム工学科 22歳 北海道)

専門的な知識、器具、薬品を用いた実験があること。普通に生活していたらできない体験をできるのは楽しい。大変なのは、授業ごとに出される課題が多いこと。また、実験科目はレポートを提出しなければならず、レポートの書き方に細かい指定があるため慣れるまでが大変」(工学部生命化学科 20歳 神奈川県)

「薬の有効成分の合成方法や薬がどう体に作用するのかと薬についてさまざまなことを学べるのが楽しい。大変なのは、3年次にほぼ毎日あった実験の実習。また1年次は必修の授業が多く大変だった」(工学部医薬品工学科 22歳 富山県)

1回生では化学、物理、生物のすべてを勉強しなければいけない」(工学部応用自然科学科 19歳 大阪府)

「とにかく最初のうちは人と一緒にやることが多いと感じる。全部そういうわけではないがそうでない科目でも実例が多いものが数多存在するので受けていて楽しい。ただし覚えることと計算することがかなり多いのでテストで落としやすい科目が存在することは確実と言える」(工学部化学生命工学科 20歳 岐阜県)

<建築学関連>

「基本的に好きなことをやっているので、さまざまな建築を見たり、有名な建築家が考えていることを知れたり、建築について学べることが楽しい。一番大変だと思うのは、模型づくり。ただ模型をつくる中でもどんな表現をしたら自分が考えている建築の魅力がより伝わるのかを考えたりするのは楽しいけど、やはり期限付きだと大変」(工学部建築系学科 21歳 東京都)

「楽しいことは設計などが完成し模型ができ上がると達成感を得ることができます。大変なことは課題の提出が近づくと徹夜することも珍しくありません。納得のいく設計ができないときにはつらい気持ちになります」(工学部システム工学・建設系学科 21歳 高知県)

いろんな人のデザインや考えに直に触れられる環境にあるというのが楽しい。刺激になるし、ワクワクする。ただ、デザインの課題と演習に加え、土木系の実験レポートをこなすのが大変。特にデザインは考える時間も必要。毎日、すきま時間は常にデザインのことで頭がいっぱいの状態」(工学部土木建築学科 18歳 熊本県)

向上心がある人が多く、お互いアドバイスをしながら作品をつくっていくのが楽しい。課題が多いうえ、設計課題もあるので凝りだしたら時間がかかり大変」(建築都市工学部住居・インテリア学科 20歳 福岡県)

工学部と理学部、理工学部との違いって?

工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!

※似ているけどどんな違いがあるの?

工学とは、制約のなかで社会の課題を解決することを目的とし、科学技術を駆使してこれまで世の中になかったものを創造する学問

一方で、理学とは自然現象を解明していく学問で、すでに存在しているものを対象としてその真理を探究していく

工学は理学の知見を生かしてものづくりを行っていくので、工学部も理学部も自然科学や数学の知識が土台となるという本質は共通していて、お互いに影響し合いながら発展してきた2つの学問を一体的に学んでいくのが理工学部だ。
「理工学部として設置されている場合もありますが、工学部と理学部のどちらに進学しようか迷う人もいるでしょう。

どちらに進学するとしても、工学と理学の両方のセンスが必要です。

ただ、理学部のほうがどちらかというと研究色が強く、工学部のほうがものづくりに特化していると言えます。

理学部は中学校や高校の理科の授業に関連するのでどんなことを学ぶのかイメージしやすい一方で、工学部に関連する学びは知るチャンスが少なく、イメージしにくいかもしれません。

各大学が工学部での学びのおもしろさをPRしていますので、ぜひオープンキャンパスなどに訪れて、どんなことを学ぶのか、ものづくりとはどういったことかを知る機会をもってみてください」。

工学部で目指せる主な資格は?

 大学や学科によって目指せる資格は異なるので、気になる資格は希望する大学の学科で取得が可能か調べてみよう。
「ここで紹介するものづくりにかかわる資格のほか、大学によっては中学校の理科や、高校の理科や情報などの教員免許を取得できる学科やコースもあります。
 
工学部で教員免許の取得を目指す人はごくわずかですが、興味のある人は調べてみるといいでしょう」。

建築士

建築士の資格取得を目指して、工学部の建築系の学科に進学する人も多い。

建築士は個人の住宅から店舗、オフィスなどの建築物の企画、設計、見積もり、施工監理などに携わる仕事を行う。

資格としては一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、基本的には建築に関する科目(指定科目)を履修できる課程をもつ学校を卒業することで受験資格を得ることができる

建築士として仕事をするには、国家試験に合格した後、必要に応じて所定の年数以上の実務経験を積むことも必要となる。

試験内容や難易度

「学科の試験」と「設計製図の試験」の両方に合格する必要があり、予備校などに通って資格取得を目指したり、設計事務所などで働くかたわら資格の勉強をしたりするケースも多い。

合格率は、一級建築士9.9%、二級建築士23.6%、木造建築士33.0%(※)。

一級建築士は特に難易度が高いが、取得すればあらゆる建物を設計できる。

※公益財団法人建築技術教育普及センター 試験結果 令和3年より

危険物取扱者

石油など引火性や発火性のある化学製品を取り扱うときに必須となる国家資格で、工学部のなかでは化学系の学科で取得目標としていることが多い。

甲種・乙種・丙種の3つに分かれていて取り扱える危険物が異なるが、甲種はすべての危険物を取り扱うことができる。

石油関連のほか、油を使用する食品工場などでも必要な資格で活躍のフィールドは広く、各種化学工場やガソリンスタンドなどでは手当がつくことが多い

試験内容や難易度

乙種・丙種は受験資格の条件はなく、誰でも受験が可能。

すべての危険物を取り扱える甲種の受験資格は、基本的に大学で化学に関する学科・課程を修めて卒業した、もしくは大学で化学に関する授業科目を15単位以上修得していれば得られる

合格率は、甲種35.2%、乙種39.7%、丙種52.0%と、甲種はほかに比べると難易度が高い(※)。

大学によっては甲種を取得目標にかかげている場合もあるので調べてみよう。

※一般財団法人消防試験研究センター 試験実施状況 危険物取扱者試験 令和4年4月~令和4年8月より

電気通信主任技術者・電気主任技術者

電気通信や電気を安全に利用するうえで欠かせない、電気通信主任技術者や電気主任技術者は、工学部の電気・電子系の学科で取得ができる国家資格

電気通信主任技術者は、電気通信ネットワークの工事、設備の維持や運用を行う監督者

「伝送交換主任技術者」「線路主任技術者」の2種類があり、電気通信工事や通信関連の企業などで電気通信のスペシャリストとして活躍できる。

電気主任技術者は、電気工作物の工事の監督をはじめ、電気を安全に供給、運用する際の監視人のような役割を担う。

取り扱うことができる電圧によって第一種から第三種まで3種類あり、第一種であれば電力会社をはじめすべての事業用電気工作物を取り扱うことができる。

試験内容や難易度

電気通信主任技術者の試験は、「電気通信システム」「設備及び設備管理」「法規」の3科目あり、大学によっては所定の単位を修得することで一部の科目試験が免除される場合があるので、調べてみよう。

全体の合格率は29.7%(※)と比較的難易度は高い。

※一般財団法人 日本データ通信協会 電気通信主任技術者試験の実施結果:全体の推移表  令和4年度第1回より

電気主任技術者は、第一種と第二種では1次試験で「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目があり、2次試験では「電力・管理」「機械・制御」の2科目がある。

第三種は一次試験の「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目のみ。

すべての科目に合格する必要があり、それぞれの合格率は、第一種電気主任技術者(二次試験)8.0%、第二種電気主任技術者(二次試験)17.2%、第三種電気主任技術者11.5%となっている(※)。

ただ、電気主任技術者は経済産業省より認定を受けた学科であれば、在籍中に所定の単位を修得し、卒業後に一定期間の実務経験を積むことで、試験を受けずに免状の申請が可能

電気主任技術者の資格を取得するなら、認定を受けている学科に進学するのが近道と言える。

※一般財団法人 電気技術者試験センター 試験実施状況の推移 令和3年度より算出

大学院への進学

工学部の卒業後の進路として、大学院へ進学する人が多いのが特長の一つ。

国内外の大学院に進学するだけでなく、大学院で修士課程を修了した後も研究を続け、博士課程に進むケースも多くみられる。
「技術の進歩により、大学の4年間だけでは足りずに大学院に進学してさらに研究を進める人は多いですね。

学校にもよりますが、国公立大学では7~8割の人が大学院に進学しているのではないでしょうか。

専門性の高い企業では修士課程を修了した人を求める傾向があり、企業に就職して活躍する人もいれば、修士課程や博士課程を経て大学教員や博士研究員として活躍している人もいます」。

工学部で人気の就職先は?

工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!

※工学部の知識を生かしたプロフェッショナルとして活躍

就職の道を選ぶ人の多くが、工学部で学んだ専門知識を生かせる職種に就いているのも工学部ならではの傾向。

佐藤先生に「先輩に人気の就職先」を教えてもらったので、主なものをみてみよう。

情報データを取り扱うシンクタンク

情報工学科系の就職先として人気なのが、「~研究所」「~総合研究所」などの名前がつくことが多い、シンクタンク

専門家を集めた研究機関として、社会政策をはじめとしてさまざまなテーマの調査や分析を行い、課題解決に導く提言などをする仕事だ。

例えば、今使われている技術やシステムがより使いやすくなるよう、開発・実用化に向けて取り組むこともある。
IT部門に力を入れている企業が多く、大学で学んだ知識を大いに生かして働くことができるでしょう」。

機械・電機関連のメーカー

機械や部品を加工するための機械や建設機械などを扱う機械メーカーや、家電や通信機器などを扱う電機メーカーが人気の就職先の一つ。

ものづくりにおいて機械や電気・電子はセットとなることが多く、学科を問わず、多くの先輩たちが機械や電機関連のメーカーで研究開発や設計、生産管理などの技術職として活躍している。
「最近はAIを活用した製品などが増えてきており、企業からは情報工学系のニーズも高まっています」。

化学メーカー

応用化学系の学科では、石油製品、医薬品、日用品などの化学メーカーで、研究、商品開発、製造、品質管理などを行う仕事が人気。

生活に身近で欠かせない製品を取り扱うことが多く、社会の需要が高いのが特長だ。
化粧品の開発や製造メーカーも人気の就職先ですね」。

電気などインフラ関連の企業

電気系の学科では、電気やガスといったインフラに関連した企業に就職する人もいる。

電気をつくる企業での発電や送電にかかわる仕事をはじめ、再生可能エネルギー事業やインフラを支える情報通信ネットワークに携わることも。

人々の安全で安心な生活を支える重要な仕事と言える。
「インフラ関連では、鉄道会社も先輩に人気の就職先の一つです」。

ゼネコン・ハウスメーカー

建築系の学科では、ゼネコンをはじめ、ハウスメーカーや建築・建設会社、設計事務所に就職する人が多い。

建築士の資格取得を目指しながら働く人もいる。
「住宅でも商業施設でも建築物には電気が必要なので、建築業界では電気系の学科の人もニーズが高いですね」。

公務員

建築系の学科のなかでも、特に都市工学系の学科では国家公務員や地方公務員を目指す人が多い傾向にある。

公務員の仕事には技術職とよばれ、例えば建築、土木、化学など工学部で学んだ専門知識を生かせる職種があり、理工学部の卒業者を一定数採用している。

建築、土木系の技術職では、国や地方自治体が管轄する施設の企画、管理をはじめ、都市開発やまちづくり、インフラにかかわる仕事などを行う。
「学科の勉強と並行して公務員試験の勉強をする必要があり、大学によっては資格取得のサポート体制を整えています。
 
一般教養や一般知識に加えて、職種ごとの専門的な試験もあるので、国家公務員、地方公務員と仕事の内容をふまえて進路を定め、それぞれの試験内容に合わせて対策を立てるといいでしょう」。

【工学部の先輩に聞いた】どんな職種に就職したい?

就職先はどう考えているのか、先輩たちのリアルな声を紹介しよう。

専門的な力をつけられている分、工学部での学びを生かしたいと考えている先輩が多い様子。
<情報工学関連>

エンジニアとして大手企業での勤務を目指している。大学で培った技術を存分に生かせる職場に就きたいと考えている」(工学部情報系学科 22歳 茨城県)

ファッション系の情報の仕事がしたい」(工学部情報知能工学課程 19歳 愛知県)

システムエンジニアとしての就職または教員になることを目指している。システムエンジニアになろうと思った理由は、昔から興味のあるプログラミングを仕事にしたいと考えているから。教員を目指すようになった理由は、まわりの友達や家族から教えるのが上手だと褒めてもらうことが多かったから。また共通テストで情報が追加されるということでその手助けをしたいと考えているから」(工学部情報工学科 19歳 神奈川県)

大学院に進学して今の研究をより深く追求する」(工学部知能工学科 22歳 岡山県)

<電気・電子工学関連>

「具体的な職業についてはわからないが、現在卒業研究としてプログラミングをしているため、それを生かせるような仕事をしていきたいと考えている」(工学部電気システム工学科 22歳 宮崎県)

「県内に本社があるITの企業に就職したいと思っている。情報系の分野が好きなのでそこで学んだことを生かせると思った」(工学部電気情報系学科 19歳 鳥取県)

エンジニアを目指している。大学での専攻を生かし、ゆくゆくは教育や医療の分野に還元したいと考えているため」(工学部電気電子工学科 19歳 宮城県)

「習った情報技術を生かし、ドローン開発またはそれに関連する職業」(工学部電気系学科 20歳 北海道)
 
鉄道周辺機器関連会社のエンジニア」(工学部電気電子工学科 20歳 東京都)

<機械工学関連>

エンジニアとして働きたいと思う。設計や制御などの学びを生かして、機械設計に携われたらと思っている」(工学部機械系学科 21歳 石川県)

工業関係の仕事」(工学部機械分野 20歳 群馬県)

設計、開発職に就きたい」(工学部機械系学科 22歳 愛媛県)

エンジンの開発者として工業系の会社への就職を目指している。理由は、自動車やバイクが好きだから、自分の好きなことを生かせると思ったため選んだ」(工学部機械電気工学科 19歳 大分県)
 
「現在研究室で研究していることについて、さらに深く学んでいきたいと考えているので、大学院に進学することを考えている。修士課程を終えたら就職しようと考えているが、具体的にどのような業種の会社に入るかは考えていない」(工学部精密工学科 22歳 千葉県)

<応用化学関連>

化粧品を開発する仕事に就きたい。理由は自身の開発した化粧品で少しでも自分の容姿にコンプレックスを感じている人を減らしたいから」(工学部生命化学科 20歳 神奈川県)

化学系のメーカーに入って、大学で学んだ知識を存分に生かそうと思います。また、まったく関係ない業種(金融や広告)なども興味があります」(工学部化学系学科 22歳 東京都)

システムエンジニアとして銀行や保険会社への就職を目指している。理由は、大学でプログラミングの授業に興味をもち、専攻していること、学んだことが生かせると思ったため選んだ」(工学部環境応用化学科 20歳 宮城県)

製薬会社に勤め、品質管理職として働きたい。大学で品質管理職で扱うような機器を使用したことがあり、大学で学んだことを生かせると思ったため選んだ」(工学部医薬品工学科 22歳 富山県)

「学部卒業後は、大学院に進学しようと思っています。その後は、研究職に就ければうれしいなぁと思っています。今進んでいるコース的にも、自分の興味的にも環境系のところに就職したいと考えています」(工学部化学バイオ工学科 20歳 愛知県)

大学院進学を希望はしている。が、就職をしやすい今の環境なら、今就職してもよいのかなとも思っている。特に近くに半導体の会社が多く、収入も高いので迷っている」(工学部物質材料学科 20歳 熊本県)

<建築学関連>

建築設計の仕事に携わりたいと考えている。いろんな条件のなかで建築を建てるというのはすごく困難なことだけど、楽しいから。今は就職に向けてCADをより使いこなせるように勉強している」(工学部建築系学科 21歳 東京都)

住宅か家具・インテリア関連。人の住まいにかかわる仕事に就きたいから」(建築都市工学部住居・インテリア学科 20歳 福岡県)

「目標は一級建築士の資格を取ること。なるべく大規模な建築物の設計、デザインに携わりたい」(工学部土木建築学科 18歳 熊本県)

「インフラ、特に水インフラを守る仕事に就きたい。流域治水を進めていきたい」(工学部土木工学科 20歳 福岡県)

公務員として建造物の発注などに携わりたいと考えている。理由は、安定しているからです」(工学部システム工学・建設系学科 21歳 高知県)

都市計画に携わるために、役所への就職を目指している。都市計画のように考えたうえでコミュニケーションをするのが得意なことに、学生生活の中で気づいたから」(工学部建設社会工学科 23歳 福岡県)

「将来は河川防災系の研究関係の職に就くために、大学院に進学しようと思っている。具体的には、大学院で基本的な知識等を身につけて、就くことができた職場先でその知識を実際に現代社会において適応させていきたいと思っている」(工学部地球工学科 20歳 京都府)

工学部の学費は?

工学部とはどんな学部?学べる内容、資格、先輩たちに人気の就職先をまとめて解説!

※進路を考える材料として、学費についても把握しておこう

国立・公立・私立の違いがあるだけでなく、工学部の学費は文系の学科より少し高めの傾向があるので、まずは目安を確認してみよう。

★大学の学費はいくら?受験料、入学料、授業料を分野別に見てみよう

工学部を目指す高校生へのメッセージ

佐藤先生から工学部を目指す高校生のみんなへのメッセージをもらったよ。
「エネルギーや環境についてなどさまざまな問題が取り上げられ、今後世の中がどうなっていくか、非常に大切な時期にきていると思います。

そうした世の中の流れのなかで、ものづくりによって新しい展開を可能にするのが工学です。

新しい世界をつくるためにどんな製品やサービスが必要か、持続可能な社会を実現するために今までとは違ったどんなものが必要かを考えてつくっていく、非常に魅力のある分野です。
 
これからの人々の生活や社会全体を動かしたり、変えたりできる、その主役になれる分野が工学と言えるでしょう。

普段の生活のなかで少しでも想いをめぐらせてみると、『こんなところにものづくりが生かされているんだ』と気づけると思いますので、工学の魅力をもっと知りたい、という人はぜひ各大学の工学部について調べてみてください」。

取材・文/ミューズ・コミュニティー 取材協力・監修/佐藤之彦 構成/寺崎彩乃(本誌)
※掲載している情報は、2022年10月時点でのものです。

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