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さまざまな業界で最新テクノロジーの導入が進む近年、人間の仕事がAIや機械に奪われるのではと心配する声も聞かれますが、これから20年後・30年後、調理師の仕事はどう変わっていくのでしょうか。調理ロボットやAIの発達という点から、調理師の将来について見ていきましょう。
感動を与える繊細な料理はロボットにはできない
ここ近年、外食チェーン店やファストフード、調理済みの惣菜・弁当などを扱う中食業界を中心に、寿司のしゃりロボットや、炒飯を自動で炒めるロボット、焼き鳥の串打ちロボット、コーヒーをいれるバリスタロボットなど、さまざまな調理ロボットの導入が進んでいます。最近はメニューを選んで材料をセットするだけで、ロボットアームが調理から盛り付けまで自動でこなす「完全調理ロボット」も登場。ロボットアームは一流シェフのテクニックや調理順序をすべて記憶しており、見た目にはもちろん、味もそのままコピーして作り出せるそうです。
では将来、調理師の仕事がすべてロボットに取って代わられる時代が訪れるのでしょうか。その答えは「NO」とある調理師は断言します。食べる人がどう感じるかの問題もありますが、手仕事だからできる繊細な料理はいつの時代も求められるからです。
五感による食材の見極め、食材の部位・状態に合わせた包丁使いや火加減、食べる人の好みや季節によって異なる味加減、食べるシーンに応じた盛り付けや演出など、調理へのこまやかな心配りや微妙な調整は、すべて人間のアナログ的な感性によるもの。そんな感性を総動員して調理師が腕を振るう高価なコース料理を、ロボットやAIができるかといったら、まずできないでしょう。手仕事ならではの繊細な味・風味・食感はもとより、そこに作った人の「心」が込められているからこそ、その味わいが食べる人に感動や至福感といった価値をもたらすのです。
「心」が伝わる手仕事の価値
たしかに、調理ロボットが作る料理もおいしいですし、手間をかけず安価に提供できるのもメリットです。外食産業の人手不足や高齢化が深刻化するなか、作業効率を高めるうえでもロボットの活躍の場はますます広がっていくと思われます。ただ、招待客をもてなす披露宴のコースメニューが、すべてロボットが自動で仕上げた料理だったら、誰でもちょっと味気なく感じるのではないでしょうか。いくらおいしくても、おもてなしの心が伝わらなければ、ゲストに満足感や感動を与えることはできないのです。
リーズナブルな料理が求められつつも、おいしいもので贅沢な気分を味わいたい、大切な人をもてなしたいという食へのニーズは、今後もずっと変わることはないでしょう。だからこそ、機械化が進めば進むほど手仕事の価値が際立ち、その違いがより鮮明に出てくるのが料理の世界。そうした意味で、まさに「手に職」となる調理師は、将来的にも人々から求められ、社会的にも期待される職業なのです。
上杉大介※2020年8月26日更新
調理師。株式会社杉六 代表取締役。高校卒業後、調理専門学校を経てホテル・居酒屋・懐石料理店等の様々な飲食業種で修行。調理技術と共に接客経営業務も経験後、2006年、28歳で独立開業。2011年、株式会社杉六設立。現在も「食(和食)」「お酒(日本酒・焼酎)」全て国産にこだわった業種を展開中
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