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アニメーターの20年後、30年後はどうなる?

アニメーターの20年後、30年後はどうなる?

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各専門領域のエキスパートが1000人単位で携わることもあるアニメ制作では、絵を描く人以外に3DCG、サウンド、声優、予算・時間管理、広告などの専門業務も多くの人が分担して携わっています。こうした人々の活躍なくしてアニメ作品は世に出ませんが、アニメ業界にAIが進出したとき、その業界図はどのように変化するのでしょうか。

AI導入でまったく新しい新境地のアニメが誕生?

アニメ制作現場の仕事がAI にとって代わられるか……これは大きな命題です。
AI にアニメーターの仕事を代替させられるかといった研究はすでに進んでいます。AIが携わることができる領域は、アニメーターの作業領域がクリエイティブか、クリエイティブでないかの観点で考えることができます。原画と原画の間をつなぐ「動画」を描く動画マンが担う業務領域は、すでに描かれたものを清書する「作業」であり「もとの絵や枠 = 原画」から離れられないという意味からも、クリエイティブではない領域に該当します。
クリエイティブではないということは、そこに独自性や創造性がないことを意味しますので、こうした観点を通して「アニメーターとAIの関係性」を考えていくと、動画マンが担う業務はAIにやってもらったほうがいい、というシンプルな答えが出てきます。
そうすれば動画作成にかかっている膨大な手間やコストをほかの作業に生かせることになり、結果としてさらに芸術的なアニメ作品を制作することも可能になります。また、キャラクターの動きや背景の演出にもっと凝った、斬新なテイストの作品を誕生させることも夢ではなくなるかもしれません。

アニメ制作現場でのAI活用は、非常に理にかなった選択

アニメ業界では監督、作画監督、演出家、原画マン、シナリオライター、コンテマン、3DCG映像、サウンド、声優、予算・時間管理、広告などの多数のエキスパートが活躍しています。
これらの各業務をクリエイティブか、クリエイティブでないかの観点で突き詰めていけば、AIに代わってもらったほうが便利な領域と、人でなければできない領域に区別することができます。その区別ができれば、現在の膨大な手間ひまが、AIによって今後は簡略化される可能性が高くなります。
また、現在のアニメ制作の現場では、作画監督や演出の指示によって原画や動画は修正されますが、手間のかかる修正業務をAIがやってくれれば、何十枚ものカットを描き、さらにそれを修正していく煩わしさも激減します。そうなれば、キャラクターの動きや背景に凝れる余裕が生まれ、高クオリティの作品が誕生するでしょうし、新人が動画マンとしての下積みを積まず、いきなり原画マン、演出、キャラクターデザインなどの業務に携わることができる可能性も増します。何より、1000人以上のスタッフが携わる劇場版アニメ制作の膨大な手間とコストを抑えるためにも、AI化は非常に理にかなった選択といえるでしょう。
しかし、アニメ制作の大半の作業がコンピューター化されても動画マンの仕事はなくならない、という見方もあります。それは、瀬戸物の茶碗にも大量生産されている一客100円程度の茶碗がある一方、一客が数十~数百万円する芸術的価値の高い茶碗もなくなっていないのと同じことが言えるからです。
つまり、AI化で動画マンの仕事がなくなるという見方がある一方、動画マンの仕事はアニメーターの成長に必要不可欠な経験であることに変わりはありません。アニメ制作に心血を注ぐアニメーターからすれば、作品に命を吹き込む動画マンの作業に徹底的にこだわりたい気持ちがなくなることはないからです。

取材協力

ふくだのりゆき/アニメーター、アニメ演出(スタジオあなろぐ所属)

1987年4月本橋秀之氏に師事してアニメーターになる。1999年8月マッドハウスに活動の拠点置き「はじめの一歩」等の作品に携わる。2008年頃からアニメーター新人支援にシフトする活動開始、現在に至る。2020年に向けて新作準備中。

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