カレッジマネジメント187号
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と、約7割(65.0%)の大学、約6割(61.3%)の企業がそう感じているのである。欧米の3か月とはいかないまでも、教育的効果の高いインターンシップには、せめて1カ月以上は必要だと言えそうだが、実際には短期が主流となってしまっている。課題は企業のメリット設計3インターンシップが日本で普及しないのはなぜだろうか。それには、大学教育への歴史的な背景の違いが挙げられる。アメリカでは企業と大学の役割分担が明確で、プロフェッショナルスクールが専門職業教育を担ってきた。一方、日本においては、歴史的に職業教育と大学との間に距離があり、企業が大学教育を信頼しておらず、OJTで社会人基礎力を担保してきた。しかし、近年は企業にその余裕がなくなり状況も変わりつつある。大企業が看板で新卒採用したはいいが、約3分の1が3年以内に離職する。社会で働くことがどういうことか分からず、堪え性のない新入社員に対して、期待値とのギャップに悩む企業は多い。人気企業に学生が集中することで、中小企業はさらに採用難に苦しんでいる。むしろ中小企業のほうが大卒求人倍率も高いのに、適材適所に流れる構造がない。これは、学生の職業観が醸成されておらず、知名度にかかわらず企業を選ぶ見識を育んでいないためだ。また企業にとって長期インターンシップは時間と労力の両方で負担が大きく、デメリットとしか映っていない。メリットの設計が不十分なことが、短期主流を招いている。反対に、大学側は、企業の採用目的のインターンシップは大学の仕事ではないという認識が強い。学生側はというと二極化しており、アグレッシブな学生だけが主に就活目的でインターンシップに参加しているのが現状だ。一方で、今の学生は「何のために学ぶのか」という動機づけがないため、学びに対して主体的でないことが問題視されている。これは中退率の高さにも表れており、大学経営にも直結している。こうした課題を解決し、「働く」と「学ぶ」を接続するツールとして、インターンシップがもっと機能すべきではないだろうか。量的・質的拡大のためには4日本においてインターンシップの拡大を図るためには、リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014企業大学無回答6カ月以上4~5カ月程度2~3カ月程度5~7週間程度1カ月程度3週間程度2週間程度1週間程度数日0.01.02.56.920.49.141.214.23.51.01.41.330.052.510.02.52.50.00.00.0図表3大学学部生におけるインターンシップの実施期間(2011年度体験学生数構成比)不明 3.3 N=56519(人)単位:(%) 6カ月以上 2.4 3カ月~6カ月未満 3.3 1カ月~3カ月未満 5.8 3週間~1カ月未満 3.6 2週間~3週間未満 20.0 1週間~2週間未満 40.1 1週間未満 21.5 図表4 学生が高い実習効果を得るために必要な日数※単位認定を行う授業科目として実施されたもののうち、特定の資格取得に関係しないもの※体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議資料より※出所:インターンシップの導入と運用のための手引き〜インターンシップ・リファレンス〜(平成21年7月、文部科学省)※体系的なキャリア教育・職業教育の推進に向けたインターンシップの更なる充実に関する調査研究協力者会議資料より

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