カレッジマネジメント187号
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神秘と先進の融合   「カバディ、カバディ、カバディ…」と一息で言い続けながら、相手に向かっていく。ドッジボールのようなコート内で〝鬼ごっこ〞の動きのように追いつめていく。タックルで相手を倒すこともある。インド、パキスタン、バングラデシュなど南アジア諸国で数千年の歴史を持つといわれる伝統的な競技が「カバディ」だ。日本国内では、1989年から全日本カバディ選手権大会が開催され、東日本、西日本大会などの大会が行われるようになった。大正大学・カバディ部を率いるキャプテンの小林俊暁さんは競技のポイントをこう語る。「格闘技の側面を持ちながら、チーム戦略の頭脳戦でもあります。ビデオで過去の対戦相手の動きを分析するなど、統一戦術の徹底も行っています」。大正大学は全日本のメンバーに選出された先輩もいる強豪だ。小林さんがキャプテンとなった代替わりの時にターニングポイントがあったという。「卒業する先輩2名が全日本に呼ばれるほどの選手。その二人が抜けても戦えるチーム作りが必要でした。しかも部員の主力が下級生の2年生が大半であり、彼らとの意思疎通がとても重要な状況でした。練習時間内だけではマンツーマンでのコミュニケーションが十分に取れないこともあり『ノート交換』を導入して、筆記ではありますが、一人ひとりと言葉を交わすことを始めました。部員全員のノート全てに自分のコメントを書いていき、練習の振り返りや目標の確認、個々人ごとの課題を共有し、自分の考えを伝えていきました」。この地道な熱意あふれる交流を重ねていく中で、新たなチーム戦略が浸透していった。「状況の違うチームの方針を真似するのではなく、良い面は自分の中に取り込みながらも、新たな方法を打ち出していく。そんな姿勢で取り組んでいこうと思っています」。小林さんは、チーム作りに試行錯誤しながらも、自らの想いをメンバーと共有しながらオリジナルなチームを作ろうとしている。カバディというスポーツは、宗教的神秘性を持ちながらも、実戦では組織戦略の共有という先進的なアプローチが必要とされる。彼ら独自の「神秘と先進の融合」が実現した時、勝利というやりがいを手にすることができるのだろう。 (写真・文/西山俊哉) 小林 俊暁 さん (人間学部社会福祉学科3年) 学生のリーダー 大正大学 カバディ部 当代 当代 Vol.49 キャプテン

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