カレッジマネジメント187号
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56力して研究資金を確保するという方向に進まざるをえない。テキサス大学の大学システムにおいては、オースティン校が研究型大学として全体をリードしている。また、カリフォルニア大学システムでは、バークレイ校、ロサンゼルス校、サンタバーバラ校、サンディエゴ校及びデーヴィス校が世界ランキング50位以内に位置している。アメリカには、寄付のカルチャーが存在する。今後、多くの州立大学が戦略のうえで基本財産を重視するようになろう。基本財産のマネジメント問題2今日では、有力私立大学において、基本財産のマネジメントが確立している。大学の財務において、基本財産のインパクトは多い。こうしたインパクトを戦略的に位置づけ、対外的に説明を行う。とくに卒業生に対して、大学のポテンシャルの拡大のための寄付を訴える。寄付の目的を明確にし、基本財産の意義を説くのである。マネジメントにおいては、資金運用がきわめて重要である。資金運用は、具体的には、投資を意味する。投資が的確であれば運用益が蓄積され、基本財産は拡大する。もっとも、金融環境にトラブルが生ずれば話は別である。現実の推移を見ると、2008年まではどの大学においても基本財産は順調に伸びてきた。だが、リーマン・ショックの影響で2009年には前年比で20%台の落ち込みを示した。それでも、翌年からは回復に転じ、多くの大学は2〜3年で元に戻っている。私立の上位校は、すでに専門的なマネジメント能力を蓄積しているのである。さて、有力私立大学は、基本財産のマネジメントについて、独立の組織を有している。いわば専門家集団である。例えば、ハーバード大学は、「ハーバード・マネジメント・カンパニー」という子会社を有している。これに対して、イエール大学は、投資委員会の下に投資オフィスを配置している。こうしたマネジメント組織は、パフォーマンスについて情報公開を行う。基本財産の意義と運用の効果をあらためて明らかにするのである。マネジメント能力が強ければ、連邦の研究助成を受けるうえで有利になる。基本財産のマネジメント能力が研究力の強化に影響を与えるのである。現実には、前述したように、ポジティブ・フィードバック現象が生じ、大学間の研究力格差が拡大する。格差拡大を放置すると、全体構造の不健全化が進む。格差是正率が必要になろう。アメリカでは、二つの対応策がとられた。一つはコモンファンド(Commonfund)であり、いま一つは「基本財産チャレンジ・グラント」である。コモンファンドは、1971年に非営利法人として設立された。フォード財団が280万ドルを補助し、イエール、スタンフォード等72大学が63百万ドルの合同運用資金で資産運用を開始した。1974年には、非課税法人として投資顧問業の認可を受けた。ミッションは、顧客の金融資源を強化するとともに、投資マネジメントの実務の改善を助けることである。自力で資産運用を行うことの困難な大学から資金を集め、共同資産として運用するのである。専門人財が運用するから高い利回りが期待できる。現在、参加大学は約835校、預かり資産は約252億ドルに達している。平均リターンは、2010年11.9%、2011年19.2%、2012年-0.3%、2013年11.7%と推移している。2013年度の投資の資産配分は、米国株式16%、債権10%、国際株18%、オルタナティブ戦略53%、短期証券・預金等3%となっている。また、「基本財産チャレンジ・グラント」は、1984年に始まり1996年に終了した連邦教育省のプロジェクトである。これは、資金力の弱い大学に基本財産としてグラントを与えるという内容である。マッチング・ファンドとして、大学にグラントと同額または半額の資金を用意させる。政策対象は、マイノリティ学生が多く在籍する大学である。2年制大学や公立大学も含まれている。グラントによって大学の基本財産を補強し、自主的に運用させるという政策である。実績は、244大学に対して353件のグラント、マッチング・ファンド額は114百万ドル、グラント額は155百万ドリクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014

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