カレッジマネジメント187号
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552011〜12年において連邦政府から多額の研究助成を受けている上位10校を見ると、次の通りである。1ジョンズ・ポプキンス、2カリフォルニア工科、3シカゴ、4マサチューセッツ工科、5ワシントン、6スタンフォード、7ニューヨーク、8ミシガン、9コロンビア、10コーネル・メディカル。実に8校が私立大学である。11位以下にも、ペンシルベニア、ハーバード、イエール、デュークなどの有力大学が続いている。こうした私立大学は、自ら資金力を強化することによって優れた教員を集め、研究力と教育力を強める。そして、優れた学生を世界中から集め、次世代の研究者を育成する。大学の研究力が強まれば、連邦政府から多額の研究助成を引き出すことができる。こうしたプロセスで、研究型大学としてレベルアップが可能になる。いわばポジティブ・フィードバックが可能になる。研究力の強い大学は、ますます強くなるのである。上位の有力大学の位置は、ほとんど変わらないということになる。財政基盤強化の出発点は、基本財産のインパクトである。そこで、アメリカの大学における基本財産のランキングを見ると、表2の通りである。ハーバード大学が群を抜いて1位にある。そして、イエール、スタンフォード、プリンストンなどの有力私立大学がこれに次いでいる。これらの大学は、いずれもタイムズの世界大学ランキングの上位にある。もちろん、大規模な大学だけが有利であるとは限らない。大規模大学は総合大学であり、すべての分野で研究型大学であるわけではない。小規模でも特定の分野で突出した高度の研究型大学が存在する。タイムズの世界大学ランキング第1位はカリフォルニア工科大学であるが、2013年の収入総額は2005百万ドル、学生数は2231人である。これに対して、ハーバード大学は、収入総額4214百万ドル、学生数19635人(フルタイム)である。教員・研究者1人当たりの研究資金でも、カリフォルニア工科大学の有力性が明らかである。それだけに、質の高い学生を確保したいという意欲が強い。基本財産の運用に強い関心を有するとともに、使途にも意を用いる。こうした小規模な研究型大学は、他にも存在する。ランキング75位のライス大学がその典型例である。やはり学生1人当たりの基本財産額において、高水準の維持に努力している。ただ、表2にはテキサス大学システムやカリフォルニア大学システムのような州立の大学システムが登場している。州政府の財政悪化で大学に対する補助金も削減される傾向にあり、研究資金を確保するためには有力私立大学が採った方式を採用し、寄付金による基本財産の蓄積に着目するようになったのである。この表でも、州立大学の基本財産の伸びは大きい。州立の4年制大学全体の収入総額に占める州政府補助金の比率は、2005〜06年には22.5%であったのが、2011〜12年には17.5%に落ち込んでいる。研究型大学を志向するならば、自ら努リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014順位大学名2005年2013年増加率(%)世界大学ランキング1ハーバード(私)25,47332,33426.942イエール(私)15,22420,78036.5113テキサス大学システム(州)11,61020,44876.1−4スターンフォード(私)12,20518,66853.025プリンストン(私)11,20718,20062.466マサチューセッツ工科(私)6,71211,00564.057テキサスA&M大学システム(州)4,9648,73275.9−8ミシガン(州)4,9318,38270.0209コロンビア(私)5,1918,19757.91410ノースウェスタン(私)4,2157,88387.01911ペンシルベニア(私)4,3707,74177.11512ノートルダム(私)3,6506,85687.8−13シカゴ(私)4,1376,66861.21014UCシステム(州)5,2226,33721.4−15デューク(私)3,8266,04057.923表2 アメリカ・大学の基本財産ランキング(10億ドル)資料:nces資料(注)世界大学ランキングは、タイムズ2012〜13

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