カレッジマネジメント187号
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54アメリカの研究型大学の資金調達から見る日本の課題清成忠男事業構想大学院大学学長連 載㊹ 研究型大学の形成には巨額の資金が必要文部科学省は、スーパーグローバルという形で、国際通用性を有する研究型大学の支援に向けて新たな政策に乗り出した。研究型大学には、設置形態を問わず、巨額の資金が必要である。その持続性に着目すると、公的財政資金の依存には限界がある。大学の戦略、主体性と自己責任も不可欠である。本稿は、世界の研究型大学をリードするアメリカの研究型大学の資金調達状況を見ておこう。わが国の大学がどこまで近づきうるか、問題は残る。アメリカ研究型大学の資金調達1アメリカと日本とは国情が異なる。したがって、アメリカ方式がただちにわが国の垂範モデルになるわけではない。以下では、この点を念頭に置いて検討を進める。まず、研究型大学の収入構造を見ておこう。ただ、一口に研究型大学といっても、類型の違いによって収入構造はかなり異なる。nces(全国教育統計センター)によると、「非常に高度の」研究型大学、「高度の」研究型大学、「博士課程」研究型大学という3区分が見られる。ここでは、「非常に高度の」私立の研究型大学の収入構造を見ておく。表1がそれである。2011〜12年の数値である。何よりもまず注目すべきは、連邦政府からの補助金やグラント等である。その割合は収入全体の24.2%を占めており、学生納付金の17.6%を上回っている。私的なグラントや受託金、寄付金などの合計も14.9%に達している。さらに、投資収益も、6.7%に及んでいる。後述するように、寄付金が基本財産(endowment)に蓄積され、その運用益の一部が研究に投入される。研究力が強化されれば連邦から多額の研究助成を引き出せる。いずれにしても、高度の研究型大学における連邦からの研究助成の対全体比24.2%は、通常の教育型大学の3.9%と比較すると格別の高水準にあることがわかる。なお、ここでは私立の研究型大学について見たが、リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014表1アメリカ・先端研究型私立大学の収入構造(2011〜12)資料:nces資料金額(ドル)構成比(%)学生納付金13,431,96617.6連邦補助金、グラント、受託金18,475,12924.2州・地方補助金、グラント、受託金895,9931.2私的グラント、受託金3,051,0954.0私的寄付、関連事業収入8,298,01910.9投資収益5,149,2626.7教育活動3,683,6114.8子会社4,174,5395.5病院14,700,17319.3その他4,483,1225.9合計76,342,910100.0

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