カレッジマネジメント187号
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49いる。毎週木曜日の午前中にセミナーを開催し、加えて昼食時にはスピーカーを用意する。セミナーには、教育学、工学、情報科学、デザインなどの複数の学部から40〜50名が参加し、現在自分の行っている研究の紹介や、必要なデータ、解析方法、その他情報等について情報交換を行う。スタンフォード大学は240科目も自身で実践しているから、分析するデータには事欠かない(図表4)。スタンフォード大学を中心に、オンライン教育に関わるコミュニティが実践面、研究面、分析面で多面的に形成されつつあることが実感される。先手を打ち、デジタル時代のルールを決める米国有力大学はとにかく果敢に、オンライン教育に取り組んでいる印象である。参加しているのは「まだ一握りの教員」と彼らも自己評価しているが、それでもスタンフォード大学だけで1年半で240科目あまりを開発する馬力は注目すべきである。教員数にすると実に、145名が関わっている。しかしそもそもなぜ、ここまでオンライン教育に力を入れるのか。デジタル時代における新しい教育形態を模索するといっても、今、これに注力しなくてはいけない理由がない。「先駆者」となることに意味がある、とのことだった。たしかに人に先駆けてチャレンジするということは失敗する確率も高い。しかし逆に、人より先に失敗に学べることでもあり、フロントランナーとして新しい世界のルールを決める覇者となれるということでもある。他大学との競争という意味もあるが、連邦政府や社会への対応という意味合いも実は大きいとのことだった。大学不要論が言われ、補助や税制面の優遇を受けられなくなるなどの大学に不利なルールが、社会の側から形成されてしまう可能性もあるからである。日本は海外の動向ばかりを学び、肝心の行動が伴わないことが多い。インターネットがブレークしてからの過去20年間の変化を見れば、これからのデジタル時代が、これまでの物理的実在のみがあった時代と大きく異なることは想像に難くない。人に先駆けて試行錯誤をし、力を付けながら、きたるデジタル時代の新しい大学の形に備えていけたらと思う。リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014図表4スタンフォード大学リティクス・ラボにおける研究テーマ    ~「分散インテリジェンス・フレームワーク」による分類~(出典)スタンフォード大学リティクス・ラボ「研究」HPコミュニティフォーラムへの参加を促すベンチャー・ラボにおけるチーム編成ディスカッション・フォーラムの活用ピア効果と学習習慣CoursePod:対面のMOOCチュートリアル成績評価ピア評価の場合の、成績評価の信頼性プログラミングにおける自動かつ複雑なフィードバックベンチャー・ラボにおけるピア評価オンライン・デザイン・スタジオにおける学習者フィードバック成績評価の分析教授法ビデオ講義における社会的手がかり教員向けダッシュボード(LTX)インフラ技術研究のためのデータ・プライバシー学習者の理解参加消極性をなくす:学習者の属性の把握学術用語の使用学習者のマインドセットの把握と介入学習動機の調査大学入学前学習者のためのオンライン教育

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