カレッジマネジメント187号
41/64

45「MIT教育の未来(The Future of MIT Education)」を検討するにあたり念頭にあったのは以下4つの世界的トレンドである。つまり、デジタル化とインターネットの普及により、世界に対して大規模にアウトリーチできるようになり、また、実世界で一体性を有していたものがデジタルに分解・再結合され、ネット上の仮想空間と実世界とが連続的につながるようになり、新しい可能性が開けているということである。大学の授業料高騰問題もオンライン教育で解決可能なように言われるようになり、そのこともあって大学側は、大学教育の物理的・時間的空間の必要性を社会に対して正当化する必要が生じている。他方、この状況を逆手に取り、オンライン教育を積極的にキャンパスにおける教育に組み入れることで、教育の可能性が大きく拡大するとみることも可能である。たとえば、物理的・時間的制約から解放されることで学生は、短期留学やインターンシップ中、場合によっては、早期卒業をして働き出しても、修了に必要な単位を取り、学位を取得できる。教育がオンライン教育を通してモジュール化すれば、試験をクリアすれば単位を得られるといったコンピテンシー・ベースドの成績評価方式で、学位取得年限を短縮できる可能性もある。さらに教育モジュールを再結合することで、多様な教育プログラムを生み出すことができる(図表1)。MITは1861年の問題解決型の教育を中心に据え「心と手(“mens et manus”)」を校訓として創設されたが、現代の領域横断的な問題を解決していくには、それぞれの問題に合わせて複数分野の教育モジュールを組み合わせて学習するのが効果的である。技術に走りがちな工学系の学生が、対象とするリクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 20141.大規模受け入れ可能性の出現:YouTubeやMOOCなど、数億人単位の集客装置が実現。2.アンバンドリングした製品の可能性や、それへの需要の高まり:新聞や音楽CDなどを分解し、コンテンツ単位で配信するサービス、異なる組み合わせで再結合し提供するサービスなどが出現。3.境界の連続化:在宅勤務による自宅とオフィス、買い物におけるネット・ショッピングと宅配による受け取りなど、ネット上の仮想空間と物理的な実在空間との境界が曖昧かつ連続化し、ブレンドされた新たな領域が創出されている。4.負担可能性とアクセス:大学の授業料の高騰に伴う高等教育へのアクセスの縮小。また、実世界に直接役立たない教育の価値への疑問。図表1:MITのイメージする教育のモジュール化(出典)「MIT教育の未来に関する全学タスクフォース」(2013年11月第一次報告)図1「高等教育のアンバンドリング」(P13)伝統的教育方法実習・実験非公式な学習キャンパス経験学期・科目モジュールキャンパス生活モジュールモジュールクラブ/チーム学期・科目モジュールモジュールスポーツモジュール学期・科目モジュールスタジオ/舞台芸術モジュールモジュール研究室/スタジオプロジェクト議論フィールド演習教員/TA/学生メンタリングピア学習(P2P)研究活動偶発的学習/魔法【従来型】モジュールモジュールモジュールモジュールモジュールモジュールモジュールモジュールモジュール研究室/スタジオ議論プロジェクトフィールド演習教員/TA/学生メンタリングピア学習(P2P)研究活動偶発的学習/魔法キャンパス生活クラブ/チームスポーツスタジオ/舞台芸術【新しい教育システム】

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です