カレッジマネジメント187号
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私達の身の回りには、日常生活用品をはじめ世界中から輸入された外国製品・文化があふれている。多くの国々との相互依存関係がますます深まっていくなかで、そこを活躍の場とする多くの日本人がおり、外国で暮らす日本人は124万9,577人に達している(外務省海外在留邦人数統計25年度要約版)。このうち永住者411,859人、長期滞在者は83万7,718人で、帯同家族の内66,960人が義務教育段階の子ども達となっている(平成24年4月現在)。そしてこれら海外在留邦人家族の小・中の義務教育段階の子女教育を引き受けているのが日本人学校だ。世界中に88校あり2万1,389名ほどが在籍している(2014.1「月刊海外子女教育」)。さらにもう一つある教育施設が補習授業校で(主に土・日を中心に日本語、日本文化などを教えている)2万2,000名ほどの子ども達が在籍している。この日本人学校と補習校に通う生徒の数はほぼ同じだが、国・地域により通学する生徒の数に大きな偏りがあり、特徴的様相を見せている。それは、経済発展著しい中国をはじめとしたアジア地域では日本人学校に通う生徒が非常に多く、逆に欧米諸国では日本人学校に通う生徒は少なく、補習校に通う生徒が圧倒的に多いのだ。理由は、欧米諸国に在住する邦人子弟はインター校か現地校に入学するからだ。世界中の日本人学校に通う児童・生徒の80%がアジアに集中している。なかでも中国には約6,500名、その約半数の3,000名ほどが上海日本人学校虹橋校、浦東校2つ(いずれも約2万㎡)に在籍している。登下校時には両校それぞれ大型バス約30台、マイクロバス約20台が短時間に1,500名ほどの子ども達を送迎するのだが、その様は正に圧巻で、毎日朝夕繰り返されるこの送迎を無事完遂することが保護者、教師の重要な仕事となっている。2011年4月日本人学校で初めての高等部が上海に設置され「日本人学校の存在」が社会の注目を浴びることとなった。上海では毎年百数十名の中学部卒業生の高校進学とこれに伴う家族のあり方が大きな問題となっていた。進学のため子どもを帰国させるのではなく、引き続き家族一緒に暮らしながら高校生活を送りたいという在留邦人の強い願い、加えて上海における日本人社会の生活インフラの一層の整備、それに伴う経済活動、企業の投資促進を側面支援することを目指し高等部の開設が実現した。そして今年の3月、35名の第一期卒業生を送り出すことができた。高等部設置に当たっては、日本の協力大学組織が結成されたことが大きな力となり、卒業実績のない新設校としては想定以上の成果を上げられたのではないかと思っている。日本人学校は各国の在留邦人の求めに応じて、小・中学生の日本人教育を行うことを目的に設置された経緯から、文部科学省が各学校に校長・教頭(管理職)や教諭を派上海日本人学校の課題リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014小暮剛一上海日本人学校運営委員会 委員長42寄 稿1日本人学校とは2世界最大規模の上海日本人学校3世界中で唯一の日本人学校高等部4「日本人学校」に求められている教育、設置の条件と現状

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