カレッジマネジメント187号
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33リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014うものを立ち上げ、この地をさらに深く研究しようとしていますが、そのことは、真に有用な「グローバル人材」の育成にもつながると考えています。私の知るところ、外国語を駆使して世界を飛び回るだけのビジネスパーソンを、世界は「グローバル人材」とは認めません。自らが拠って立つ地域に深い見識と愛情を持つ人物だけが国際社会において敬愛されるのです。つまり、ローカルを徹底して深めることがグローバルに活躍する力となり得る。私は、ローカルとグローバルを融合した「グローカル」という観点がこれからのキーワードになると考えています。本学においても、「グローカル人材」の育成を今後の大きな目標として掲げ、取り組み始めています。手作り感あふれる「現代の志塾」本学は2009年に教育理念を、「現代の志塾」としています。私はこれまで多くの大学に関わってきましたが、本学ほど学生の面倒見のいい大学を他に知りません。その点で「志塾」という名に全く偽りはなく、「手作り感」にあふれた大学といえます。とりわけ学生指導から就職指導に至るまで、本学職員の貢献度は計り知れないほど大きいと感じています。全学生がゼミナールに帰属し、ゼミ中心で学んでいくというスタイルも「現代の志塾」にふさわしいと考えます。本学教員は私を含めて実務家出身者が多いのですが、先生方に特にお願いしているのは、学生一人ひとりにきちんと向き合うこと。教育、研究、地域貢献という役割の中では、教育に6割の比重をかけて下さいと言っています。私は、学生と向き合うことを自分自身にも課しています。本学に様々なゼミがあるなか、私の主宰するインターゼミ(社会工学研究会)というものもあり、毎週土曜日に東京・九段のサテライトキャンパスで開催しています。学部生と大学院生の精鋭がグループワークを行い、課題解決力を磨いていく。研究対象にした企業から感謝状を頂いたり、震災復興コンテストに入賞するなど、成果も確実に上がっています。さらにもうひとつ、私が学生と向き合うために、同時に地域社会に貢献するために行っているのが、今年7年目を迎えた「多摩大学リレー講座」です。各界の論客に講演して頂くなかで世界各地の現況や日本国内の諸問題を多面的に検討し、受講者が世界認識を獲得することを主眼としています。半期で全12回。定員は約500人。うち本学学生が200人で、彼らは最後にレポートを提出し、私も審査して単位認定しています。学生以外は主に地域の社会人達で、半期で1万2000円(多摩市在住者等は1万円)を払って受講されます。延べ7万人の受講者を集めましたが、「有料」でもこれほど多くの人々が参加するところに今後の大きな可能性を感じています。本学は1993年より大学院を設置しており、現在社会人向けMBAコース・ビジネスICTコースとして確固たるポジションを築いたと自負していますが、大学経営においても今後は「社会人」、特に「地域の社会人」がキーポイントになるのではないかと考えています。このところ日本においてもようやくNPO活動が根付きつつありますが、NPOの法務や経理、人事等の専門知識を持つ人材は不足しています。リタイアした人々がそうした知識を学び直し、改めて社会と関わっていく際に大学が役立つ。例えばそのような価値を新たに創造し、提供していくべきではないかと思っています。ここ1、2年、インターゼミやリレー講座に参加してくれた学生の中で、「4年間で自分は大きく成長し、希望の就職も実現しました」と喜ばしいメッセージを残して卒業する学生が増えています。そういう確かな手ごたえと、明白な実績をさらに高く積み上げていくことが私の責務であると認識しております。

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