カレッジマネジメント187号
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32リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014多摩大学は今年、創立25周年を迎えました。世界史的には、本学が創立した1989年(平成元年)にベルリンの壁が崩れ、1991年にはソビエト連邦が崩壊し、冷戦が終結。「イデオロギーの対立」の時代が終わり、世界は「グローバル化」「IT革命」といった時代に突入しました。本学の25年間も、まさにそうした時代の流れと併走したものでした。国境を超えて人、物、金、技術、情報が自由に行き交う時代を生き抜く人材、すなわち、今でいうところの「グローバル人材」の育成に、他に先駆けて真正面から取り組んできた大学であるといえるでしょう。しかし今、冷戦後のパラダイムが新たな局面を迎え、新たな世界秩序とその中での日本の役割を模索せざるをえない状況において、本学も創立から25年が経過し、学長として、今後どのような舵取りをしていくべきかが鋭く問われていると認識しています。問題意識の強い市民が学び、活動する「多摩」2009年、私は学長に就任しました。この話を頂いた時、もしこの大学名に「多摩」といった地名が入っていなければ、もし地域へのこだわりのない大学であったならば、あるいは引き受けなかったかもしれません。それくらい、この大学の地域への思い入れに共感した部分がありました。多摩というところは、実にユニークな歴史を持つ場所です。広く捉えれば、多摩とは多摩川と相模川とに挟まれ、北は八王子から南は三浦半島周辺にまで広がる、東京西部と神奈川東部にまたがる地域。もともと家康の関東入府に伴い、千人の武士集団が住み着いた地域で、彼らが新撰組となり、また自由民権運動もここで大いに展開されました。戦後は多摩ニュータウンにおいて、市民自らが「多摩自由大学」を立ち上げるなど、問題意識の強い市民が主体的に学び、活動するDNAが今なお息づく場所なのです。本学でも「多摩学」といてらしま・じつろう氏1947年北海道生まれ。1973年 早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。三井物産株式会社入社1991年 米国三井物産ワシントン事務所長1994年 石橋湛山賞受賞1999年 株式会社三井物産戦略研究所所長、2009年同会長2001年 一般財団法人日本総合研究所理事長、2006年同会長、2010年同理事長2002年 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授2009年 多摩大学学長2010年 早稲田大学名誉博士学位現在、文部科学省日中韓大学間交流・連携推進会議委員、経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会総合部会委員、国土交通省新たな「国土のグランドデザイン」構築に関する有識者懇談会委員等兼任近著は『リベラル再生の基軸―脳力のレッスンⅣ』(岩波書店)、『何のために働くのか―自分を創る生き方』(文春新書)、他著書多数。ローカルとグローバルを融合する「グローカル人材」を育成多摩大学 学長寺島 実郎

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