カレッジマネジメント187号
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27こうした経験をすれば、中国語の力もアップする。大連滞在中には、中国漢語水平考試の5級(1級(低)―6級(高)を受験することにしているが、その合格率は、2011年度で56%、12年度は80%、13年度は93%である。5級は「中国語の新聞・雑誌を読んだり、中国語のテレビや映画を鑑賞することができ、中国語を用いて比較的整ったスピーチを行うことができる」というレベルである。中国語の学習をはじめて、2年間でこうしたレベルに到達するのは、なかなかのものではないだろうか。また、このプログラムの履修者の就職率は100%であることも、大学の売りである。客観的な効果指標を示せと言われれば、これらの数値が意味を持つのかもしれないが、学長の言われる「タフになる」ことのほうが、より意味があるように思う。「日本にいたままだと、ハングリーになることなく過ごせます。自分たち同年代の若者が、違う世界で違う価値観で生きていることを知ることが大切なのです」と池島学長。肯んずるしかない。次の夢に向けて学長の夢はまだまだ成長途上であるが、当面は、アジアに関して、日本の大学のなかでNo.1になることが目標である。それは、大学のミッションであるからだけではなく、今後の世界の動向を考えたとき、アジアが発展のカギを握るからである。現在の具体策をいくつか示すと、日本の学生を中国に送るのであれば、中国の学生を日本に呼べば相互交流になるということで、大連外国語大学との協定で、亜細亜大学への3年次編入により、両方の大学の学位取得可能なダブル・ディグリープログラムを創設した。2006年からはじまったこのプログラムによる編入生は、徐々に増加し、当初の15名から2014年には42名にまで拡大している。もう1つは、大連以外の地域での海外インターンシップであり、当面のねらいは、ベトナムである。大連での留学とインターンシップの5カ月は、学長に言わせると短い。もっと長期のプログラムを構築したい。こうした目的のもとで、2014年3月にベトナムの大学を訪問して学術文化交流協定を締結し、大連モデルと称しているインターンシップを組み込んだ留学の可能性を探っている。それだけではない。すでに亜細亜大学では、この大連への5カ月留学プログラム(AUCP)以外にも、1)アメリカへの5カ月留学(AUAP)、2)14の留学先への3〜5週間の短期留学(AUGP)、3)15の留学先への約1年間の交換留学プログラム(AUEP)をもっており、留学は盛んである。この多くが、アジアに力点を置いていることはいうまでもない。しかしながら、グローバル化が進むなか、アジア各国の言語習得だけでは不十分であり、どの地域でも英語の重要性は高まっている。アジアに焦点を置いても、他方で欧米を視野に収めることが欠かせない。そこで、アジア地域に留学をしつつも、英語の修得も可能になるプログラムを開発し、アジアと欧米との連結ができる人間を育成していくことを、課題としている。ところで、「夢カレ」に参加した学生は、2013年までの累積は129名、大連外国語大学からダブル・ディグリー取得を目的に3年次に編入した学生は、2014年時点での累積は286名になった。それ以外のプログラムの履修者を含めれば相当の数になる。皆、それぞれにこの留学を活かして活躍している。今後の留学プログラムの発展のために、この人脈を利用しない手はない。これまで卒業生のネットワーク構築の仕事はやや手薄であった。学長の当面の仕事は、いかにして卒業生のネットワークを作り、在学生のグローバル化を進めていくかである。リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014吉田 文 (早稲田大学教授)特集 インターンシップの教育効果図表3 大連外国語大学からの3年次編入生数の推移0 10 20 30 40 50 60 (人) 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 15 17 25 49 40 37 30 31 42 (年)
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