カレッジマネジメント187号
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23た学生に比べて3.9%も高かった。GPAの分布でみても、実践系キャリア科目の受講者の58%がGPA上位層となっていて、非受講者の33%を大きく引き離している。実践系科目受講と好成績との因果関係は即断できないが、実践系キャリア科目の受講が学生の学習意欲を高めることにつながっているらしいことは推察できる。そのことは、2006-2009年度卒業生1,353名に対するアンケート結果(2011年実施)でも確認可能だ(図表2)。在学中に受講したキャリア形成支援教育科目が、就活、学習意欲向上、社会に出た後に役立ったかどうかを尋ねた結果、インターンシップやO/OCFといった実践系キャリア科目の役立ち度は50%前後で他の科目よりも評価が高い。さらに、実践系科目の受講生は、職場で良好な人間関係を築き、将来につながるキャリア観をもって仕事に従事できていることで、現在の仕事に対する満足度も高いという。「日本型コーオプ教育」への挑戦と課題こうして見てくれば、やはり実践系のインターンシップやPBLを組み込んだキャリア教育は学生の長期的成長にとって効果があることがわかる。その意味で、京産大にとっての次なる課題は、2014年に日本型コーオプ教育として開始された「むすびわざコーオプ」を基盤にしつつ、全学での就業力育成体制を強化することだ。「むすびわざコーオプ」は、図表1で「世界標準の新たなプログラム」とも銘打たれているように、これまでのような1~2週間程度のインターンシップではなく、世界で標準的な3か月から半年の長期有償インターンシップを組み込んだプログラムだ。共通のむすびわざコーオプセミナーと、学部の専門教育を土台にしたインターンシップから構成されている。前者ではITスキルや日本語力のトレーニングを徹底して行い、後者のインターンシップでは3年次春学期に受入先企業で社員と同じように働きながら社会につながる学びが体験できるつくりになっている。実施初年度の今年は、経済・経営・法の3学部から計13名の学生が受講しているという。ここで重要なのは、京産大が、これまで培ってきたコーオプ教育のメソッドを使って、全学で専門教育に立脚した就業力育成を推進しようとしていることだ。専門教育段階のゼミでも実践志向の教育を取り入れてもらい活性化を図ることを目指している。その支援のためにも、これまでのキャリア教育研究開発センターを「コーオプ教育研究開発センター」に改組した。学内でやる気のある一部のグループだけが関わるのでなく、大学全体として取り組もうとしている。今後は、そうした全学的な取り組みを専門的に支えるコーオプ専門人材(プログラムコーディネータ)の育成・配置も課題だと中川理事は考えている。「むすびわざコーオプ」の開始に象徴されるように、京産大のキャリア教育は新たなステージに入ったといっていい。2015年8月には、コーオプ教育の普及・発展に携わる個人や機関が加盟する国際機関WACEの世界大会を誘致する予定で、今年8月30日には「わが国のコーオプ教育の確立に向かって」をテーマにWACEプレ大会を開催する。いま、京産大はキャリア教育の新たな一歩を刻もうとしている。リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014(杉本和弘 東北大学高度教養教育・学生支援機構准教授)自己発見と キャリア・プラン 現代社会における 職業観 インターンシップ 1〜6 キャリア・デザイン 基礎 キャリア・ Re‐デザイン キャリア・デザイン 応用 O/OCF 21世紀と企業の課題 チャレンジ精神の 源流 30.4 0.0 25.0 50.0 75.0 (%) 20.2 19.5 10.9 10.8 5.6 5.3 4.2 1.1 履修した(N=1353) 就活に役立った 学習意欲向上に役立った 社会に出た後役立った ※科目名は、該当する卒業生在籍時、開講していたものとする 図表2 卒業生アンケートにみるキャリア形成支援教育科目の成果特集 インターンシップの教育効果

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