カレッジマネジメント187号
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11リクルート カレッジマネジメント187 / Jul. - Aug. 2014な門戸が開かれたわけだ。東京大学でも、学生に変化の兆しがある。勉強一辺倒の保守的な層もいれば、既存のキャリアデザインから外れたい、良い就職や高収入にとらわれない層も出てきている。同大学には、『初年次長期自主活動プログラム「FLY(Freshers' Leave Year)Program」』がある。これは、入学直後の学部生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得し、大学以外の場で、自分で決めた長期社会体験活動(ボランティア活動、就業体験活動、国際交流活動など)を主体的に行うプログラム。「タフでグローバルな東大生」を育成しようとする同大学の教育改革の試みだ。プログラムに参加すると卒業が1年遅れるのだが、去年は13人の学生が手を挙げたことが、東大生の変化を示している。実は、去年4月に駒場キャンパスで講演を行った際にアンケートを行ったところ、1年生の7割がギャップイヤーに関心があると答えた。もっと早く知っていればやっていたという自由回答もあった。つまり、高校時代から知っていれば準備できたのにと言っているのである。大学でどう学び、どう過ごすかを、高校時代に描けているかが重要であることを指している。早稲田大学、慶應義塾大学、一橋大学なども実施、検討の動きを見せており、今後はこれと併行で学事暦へのクォーター制導入が加速していくと考えられる。1クォーターと夏期休暇を合わせ、半年間のインターンシップに参加する選択肢が開けていくだろう。希望すれば誰もが参加できる文化に7今や「学ぶ」と「働く」の接続は、大学教育に対する社会の要請ともいえるのではないだろうか。早いうちにという点では、初等・中等教育からも始まるべきである。より多くの人に教育機会を提供するためには、カリキュラムに位置づけるなどシステムとして基盤を整備すべきである。もちろん、こうした社会体験活動は、自ら意思決定して主体的に取り組むことが大事であり、強制されるべきではない。ただ一方で、「今の学生」の自主性に任せてしまうということだけでは参加率からも疑問があり、教育に携わる立場からすると無責任なように思う。大学だけでなく、企業も含め、社会が一丸となって後押しをする必要がある。最終的には、全員が希望すればギャップイヤー活動ができる文化を定着させるべきであろう。そのためには、コストの面からも、アメリカのように政府のテコ入れで加速させる方法が考えられる。文部科学省においても、下村博文大臣の肝いりで「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」を立ち上げ議論がなされた。今年の4月には、入学直後、在学中、卒業前など多様な時期に、1カ月以上のまとまった期間実施することで、学ぶ動機を明確にして学生の主体的な学びを促す“学外学修プログラム”推進のとりまとめが行われるなど、風は吹き始めている。ギャップイヤーについては既に、前述の東京大学や国際教養大学のギャップイヤー入試などの実例も出てきているので、評判を上げる大学とそうでない大学の差が出てくるはずだ。ただし、競争的資金等による一時的な助成金だけでは持続できないため、本質的には企業との協力が不可欠である。個社との協力が難しければ、複数企業との連携も考えられる。人口10万人以上の県庁所在地や中核都市では、企業が資金を出し合いインターンシップのコンソーシアムを作っている。新卒の募集を行っていない中小企業は、インターンシップが戦力になる学生を獲得する重要な機会だということを知っているのである。時代の変化に伴い、学生の要請も変わってきた。我々が実施しているインターンシッププログラムに参加した学生を見ていると、自分の人生を生きる能動性にスイッチが入ったことで、就活一つを取ってみても、やりたいことを見つけ、中小・ベンチャー企業含めて自分にマッチした企業を見極め、スピーディーに進路を決めていく。社会起業家もしかりだ。新しい時代の、新しい価値観を持った世代が生まれてきている。大学には、旧来型の学びではなく、彼らに響く学びを創造していく気概を望みたい。そのためにも私どもも積極的な協働を進めていきたいと考えている。(文/本誌 能地泰代)※1企業主導のインターンシップに対して、大学主導でプログラム化された就業体験。理論と実践の反復として、在学中に2~3回参加することも多い。※2在学期間中に、半年間×2回や1年間×1回の就業体験を含む教育課程のこと。内容はコーオプ教育とほぼ同じ。特集 インターンシップの教育効果

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