キャリアガイダンスVol.428 別冊
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7Vol.428 別冊付録産実習に参加できるのは企業の協力があればこそ。2018年度は764の事業所が実習先となった。これらの企業には生産工学部の卒業生が働いていることも多く、学生の受け入れや指導にも熱心に関わってくれるという。生産工学部の伝統、教員陣の企業との関係づくり、および卒業生とのつながりに基づいた企業との信頼関係が、これだけの規模のインターンシップを可能にしている。 「1年次から積み重ねてきた教育を通して学生が現場で学ぶための基礎を習得していることも、企業との信頼関係につながっていると思います。企業から学生に対して『PDCAサイクルが身についている』という評価を受けることも多いですから」(土木工学科/中村倫明助教) 学生は、実習期間中も、毎日『生産実習NOTES』をつけ、その日に体験したことを振り返り、翌日の課題を設定する。コミュニケーションの重要性など日々学ぶことはいくらでもあり、1日として無駄な日はない。 機械工学科の坂田憲泰准教授は、実践的な技術教育という面でも現場で学ぶことの価値は高いと語る。 「ものづくりの技術はすべてがオープンにされているわけではなく、教科書では学べないことも多いんです。だからこそ、学生にとって製造現場での体験は『こんな技術もあるんだ』という発見に満ちています」 このように密度の濃い生産実習での学びを通して学生は目に見えて成長する。複数の学科で生産実習前後にジェネリックスキルを診断するアセスメントプログラムを実施したところ、コンピテンシー(行動特性)において、他大学の理工系学生(3年次の1年間での変化)よりも大きな能力の伸長が確認されたという。 学生時代から現場と直結した学びを経験することには、就職後に感じるギャップを軽減する効果もある。 「生産工学部で企業を対象に試験的に調査をしたところ、卒業生の離職率は一般的な平均値の半分程度でした。単に就職できるというだけではなく、就職後に働き続ける力を養うことができるのも本学部の強みといえるでしょう」(落合学部長) 工学に経営学を加えた学びで視野を広げ、現場と直結した教育で実践力を養う生産工学部の教育は、着実に日本のものづくりを支えるエンジニアを育て続けている。在学生Interview エービーシー商会という建材メーカーで生産実習を行いました。高分子化学に興味があり、その技術が生かせる塗り床材の研究を体験したかったのですが、実は現場に入ってみたら、高分子素材は扱っていないことがわかりました。しかし、それ以上に学ぶことが多い実習でした。10日間の実習で、1日目は社会人マナーを学び、2日目以降は研究所に配属になり研究職の方の補助を担当。具体的には、基剤と硬化剤を混ぜ合わせて、どのような組み合わせが最適なのかを調べる実験に携わりました。実際に塗り床材として製品化することを目的とした実験なので、やりがいがあり、楽しかったですね。また、現場で気づいたことの一つが、研究職は決して研究だけをやっているわけではないということです。営業の方や外部の方とのやりとりも多く、コミュニケーションが大切な仕事なのだということがわかりました。最終日のプレゼンでは実習で経験したことを研究所の皆さんの前で発表し、少し社会人に近づけたのかなという手応えを得ることもできました。この生産実習での印象が強く、実はその後、実習先だったエービーシー商会が内定先にもなったんです。 常石造船という会社での生産実習に参加しました。実習先は前半の10日間が福山の本社、後半の15日間がパラグアイの現地法人でした。私はゼネコン志望で最終的に内定もゼネコンに決まったのですが、生産実習ではまず海外で働くとはどういうことかを知ることが大切だと考えてこの選択をしました。実習前に常石造船の工場長のアドバイスを聞くことができたのも大きかったですね。学んだことの一つが、日本とパラグアイでは現場で働く人たちの考え方も仕事の進め方も違うということ。これは実際に両方を体験したからこそ身をもって理解できたことです。パラグアイの人たちとつたない英語と身振り手振りで意思疎通を図ったことも非常にいい経験になりました。パラグアイでは、現地の工場での仕事を経験した以外に、他の日本企業の現地法人やJICAの事務所、日本大使館などを訪問しました。現地が抱える社会課題に対して日本企業がどのような貢献をしているか、日本企業が現地でどのようなマネジメントをしているかといったことも学び、今後自分が海外で働くうえでの基礎となる視点や考え方も養えたと感じています。土木工学科4年石原大樹さん(東京都立南平高校卒業)応用分子化学科4年柳沢光佑さん(東京農業大学第三高校卒業)製品化に直結する実験に携わってやりがいを実感パラグアイでの実習や視察で視野が広がった

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