キャリアガイダンスVol.428 別冊
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4Vol.428 別冊付録協働する力する力技術コミュニケーション力企画力経営知識市場分析力リーダーシップ提案力―ソフトスキル(人)――ハードスキル(業務)―業務を支えるソフトスキルの多様性縦断/横断で検討できるハードスキルの柔軟性創造力バリューチェーン(組織機能)営業設計調達製造…経営経営事業現場が選ばれるのかというと、このような企業の現場には顧客の要望に応えて創意工夫する卓越した技術力があるから。特に精巧な部品や精密機械など経験の蓄積が問われる分野では、後発の企業が簡単にその技術を真似ることは難しいと言われる。 「その他にも、日本のメーカーには優秀な現場の研究者やエンジニアが開発し、磨き上げてきた技術の蓄積があります。日本の製造業に多い成熟企業は、こうしたこれまでの事業特性を保持しながら、同時にイノベーションを起こす能力をもてるかが大きな課題です」 ここまで説明してきた条件下で、日本の製造業各社が今後どのような経営にシフトしていくかについて平山氏はこう語る。 「これまでの礎を築いてきた稼げる領域の既存事業を改善改良的に“深化”して稼ぐ力をより強固にする経営力と、その稼ぐ力を投じて新たな成長機会を“探索”して事業化し、次なる稼ぐ力を構築する経営力の両面が求められる時代になっていくでしょう」 このような経営や組織の抜本的な改革が進むことにより、個々のエンジニアの働き方や働く環境も変わってくる。 よりスピーディに変化に対応できるよう、現場への権限委譲が進んでいくだろうし、各自が自分の専門領域に縛られやすい極端な分業体制も見直されていくだろう。 その一方で、労働人口が減少し、第4次産業革命による業務のデジタライゼーションも進んでいく。AIに任せられる仕事はAIに任せるという流れが本格化していく。必然的に、一人ひとりのエンジニアがより多様な能力を備え、新しいことにチャレンジしていくことが重要になってくると平山氏は指摘する。 「例えば、大学で機械工学を学んで、就職してからも機械工学の限定された領域のエキスパートとして活躍し続けるといったキャリアは、よほど卓越した技術力をもっていない限りは難しくなっていきます。エンジニアであっても経営的な視点をもち、マーケット全体を俯瞰的に見ることができる人や、専門領域の枠を超えてコラボレーションしたり、新しいことを企画・提案したりできる人などの活躍の場が拡大する時代になっていくでしょう(図5)」 市場の変化をいち早く敏感にとらえることができるのは何より現場。イノベーションの源泉は現場にあるのだから、個々のエンジニアにとっては、製造業は今まで以上にやりがいやチャンスが増してくる業界と言えそうだ。 では、そういった力はどのようにすれば磨くことができるのか。かつての日本企業は新卒で入社した若者を一から育成していく力に長けていた。ただし、それは先輩たちのやり方をそのまま踏襲していればよかった連続的成長の時代だったからこそ可能だったこと。しかし、今は製造業に限らず多くの企業が人材育成に関して思うような成果をあげられていない。つまり「会社に入りさえすればなんとかなる」という考え方がもはや通用しなくなっているということだ。そうなると、大学等でどれだけ幅広い力を養うことができるかが重要になる。 そのため、進学先を検討する際に重視される項目も変わってくる。もちろん技術に対する好奇心や探究心を育てていくことはエンジニアとしての核になるものなので、この点は引き続き大切だ。加えて、経営学やマーケティングなど、専門に関連するより広い分野についても学べるかどうか、PBL(Project Based Learning)などを通して、現実の社会課題に触れたり、多様な人たちとお互いに刺激し合いながら新しいアイデアを生み出したりするような学びの機会があるかどうかなどがポイントになるだろう。海外留学なども経験の幅を広げる機会としては有効と言える。 「実際にメーカーの人たちと話していると、例えば、学生時代にさまざまな業界のアルバイト経験がある人ほど伸びているという話も聞きます。その意味では、学生時代に複数の業界の仕事の現場を体験することもプラスになると思いますね」 上記を踏まえれば、多様な現場を経験できるインターンシッププログラムが充実しているかどうかといったことも、未来を担うエンジニアとしての基礎力を養ううえで重要になりそうだ。 大きく変化するこれからの製造業で活躍できる力を養うという意味では、専門性に加えて+αの力をどう磨けるかという視点で大学や学部を見てみることも、大切になっている。今後求められるエンジニアの能力イメージ図5※経営競争基盤 平山氏のお話を基に編集部にて作成

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