キャリアガイダンスVol.427 別冊
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4Vol.427 別冊付録め、これからの時代のリーダーシップの基礎を身につけていくためには、何が必要なのだろうか。 岡島氏は、「とにかく早い段階で自分の“好きなこと”を見つけてほしい」と、高校生に向けてメッセージを送る。課題設定力も自己効力感も、好きなことにのめり込んで、主体的に取り組むプロセスでこそ養われる力だからだ。 さて、ここで自己効力感が獲得されるメカニズムについて整理しておきたい(図4)。 制御体験とは、実際に自分で何かにチャレンジして達成する経験のこと。代理体験とは、例えば、先輩や同級生などが何かを達成する姿を見て、「自分にもできるかもしれない」という思いを抱くこと。言語的説得とは、先生や保護者、先輩、同級生などからの「あなたならできる!」という励ましのことだ。 このように見ていくと、自己効力感とは、人と交わりながら、自分にとって未知のことにチャレンジすることによって高められるものであることがわかる。そこで岡島氏が強調するのが、高校・大学時代における社会学習の重要性だ。 「もちろん部活動や学校行事もその機会になり得ますが、高校生や大学生には、より多く打席に立ってほしい。ですから、自治体や企業と連携したプロジェクト型の社会学習にも積極的に取り組んでもらいたいですね。視野が広がり、新たに“好きなこと”に出会う機会にもなりますし、『この問題に対して自分たちの力を生かしてできることは何だろう』と考えることは課題設定力を養うことにつながります。また、多様な大人と協働する経験もプラスになります」 例えば、今の高校生や大学生はデジタルネイティブであることが大きな強み。社会や地域の課題に取り組む際、世代が上の大人にはないこの強みを生かして貢献することは十分可能だ。 岡島氏は、若者のリーダーシップを養うために、学校や先生、保護者に求められるのは、このような機会をできるだけ多く提供することだという。 「それ以外にはできるだけ余計な口出しはしないということも大切です。“好きなこと”は大人が押しつけることができません。“向いている、向いていない”という話とも違います。 “好きか、嫌いか”。これは本人にしか決められないことですから。自分の強みも、リーダーシップも、“好き”を追求することによって身につき、それを軸に広がっていくのです」 もう一つ重要なのは、承認欲求の呪縛を解いてあげることだと岡島氏は指摘する。今の若者たちは、周囲、特に大人から“すごい”と言われたいという承認欲求が非常に強い。しかし、大人の評価に関係なく、本当に自分の好きなことを見つけない限り、本当の意味での強みを身につけることは難しい。 では、高校や大学で自分の強みやリーダーシップの基礎を身につけ、社会人になってからもそれらを磨き続けていくことで切り拓かれる「VUCA時代のキャリア」とはどのようなものだろうか。 「これからは職業人生が60年ほどになっていきます。かつ、VUCAですから変化が激しい。一つの“好きなこと”だけで一生やっていけるわけではありません。だいたい20年周期くらいで新たな領域に進出していくことが必要になるでしょう。ですから、好きなことを軸に学び続け、キャリアを重ねながら、好きなことの幅を広げ、強みを増やしていくことが大切です。私は『キャリアのタグ』と言っていますが、自分の強みになる要素(タグ)を、できるだけ遠い領域の組み合わせで3つ以上もっていることも重要になります。例えば、今であれば、英語が得意で、データサイエンスに精通していて、社会課題を発掘する能力があるといった組み合わせなどは理想的でしょうね」 また、VUCA Worldでは、長いキャリアのなかで、いつ、どのような局面で、どのようなチャレンジが必要になるのかを予測することはできない。だからこそ、自分の得意分野、専門性と共に未知の領域に向き合い、やったことのないことに自信をもって取り組むことができる力を早い段階から養っておくことが求められる。 大学選び、学部・学科選びに際しても、これからはそういった力をつけられるかどうかが重要なポイントの一つになっていくのではないだろうか。自己効力感の構成要素(A.バンデューラ)図4出所/株式会社プロノバ作成資料をもとに編集部で構成自己効力感をもつためには次の4つの要素が必要自分自身が何かを達成したり、成功したりした経験他者が何かを達成したり、成功するのを観察すること自分に能力があると言語的に説明されること(言語的励まし)良好な生理状態(さらには気分の高揚)制御体験言語的説得生理的状態代理体験

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