キャリアガイダンスVol.426 別冊
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3Vol.426 別冊付録自分を信じる結果を出す可能性を感じる行動するすることによって、学生同士で学び合い、支援する側される側が一緒に成長していく場が形成されていきます」 次に、コーチングの理論・手法を取り入れたピアサポートが、どのようにして支援される側の成長を促すのか、そのメカニズムを伊藤氏に解説してもらおう。 「コーチングで大切なのは、相手を操作しないこと、答えを与えないことです。答えは支援する相手がもっているのです。コーチングの専門用語ではオートクラインと言いますが、相手が自分の中にある答えに自分で気付くようコミュニケーションすることが重要なポイントになります」 このようなコミュニケーションを基本として、図2で示したコーチングの代表的な理論である「サクセスサイクル」を意識して対話を重ねていく。 人はまず自分を信じる(Belief)ことによって、自分にもできるという可能性(Potential)を感じ、それがあって初めて行動(Action)を起こすことができる。その行動によって結果(Result)が出れば、さらに自分を信じることができる。この好循環を生み出すことがピアサポーター(コーチ)の役割となる。 このサイクルを実現するための実践のプロセスを示すのがこれも代表的なコーチング理論である「GROWモデル」(図3)。 まず、目標(Goal)と現実(Reality)の間にあるギャップをブレイクダウンし、現状の課題を探る。自己肯定感が低い人は、あらゆる課題をごちゃ混ぜにして「自分には何もできない。どうせ無理氏は次のように説明する。 「サポートを受ける相手が同じような立場の仲間や先輩だからコミュニケーションが取りやすいということが一つ。また、人は自分の成長に影響を与えた人に『自分もこうなりたい』という憧れを抱きやすいため、ピアサポーターが、支援される側にとっての身近なロールモデルにもなります。これがキャリア教育において効果を発揮するのです」(図1) 主体的なキャリア意識やキャリアを切り拓いていく力を養ううえで重要なのは、何よりも本人の気づきにある。その意味では、本格的にトレーニングを積んだ専門家ではないピアサポーターでも十分に支援することは可能なのだ。ただし、単に身近な人が支援をすればうまくいくというわけではない。コーチング理論・手法などの基本的なポイントは押さえておく必要がある。 「私たちWenessは、大学を対象としたピアチュータリングの研修も手がけていますが、そこで柱となっているのが、コーチング(1対1のコミュニケーション)、ファシリテーション(1対多のコミュニケーション)、チーミング(目的に応じたチームを作り上げること)の3つです。これらのスキルを基本的なレベルで習得した学生を育て、ラーニングコモンズのような環境や仕組みを整備成功を導く「サクセスサイクル」問題解決のプロセスを示す「GROWモデル」図3図2※ジョン・ウィットモアの「GROWモデル」をもとに編集部で作成※トニー・ロビンズの「サクセスサイクル」を編集部で一部加工目標と現実のギャップをブレイクダウンするできることをリストアップ優先順位をつけてやることをまとめる・ ー・ ー・ ー・ ー・ ー・ ー… ・ ー・ ー・ ー・ ー・ ー・ ー Wrap Upの部分はWill(意志)が入る場合もあるコーチとの対話によって雑然とした課題を棚卸しして整理

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