キャリアガイダンスVol.426 別冊
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2Vol.426 別冊付録 ピアサポートとは、専門家や教師ではなく、同じような立場、近い立場の仲間によるサポートのこと。その歴史は古く、福祉・心理・教育などの分野で幅広く用いられてきた手法だが、今、このピアサポートが大学のキャリア教育でも注目されつつある。 先行する動きは既にアメリカで起きている。アメリカでは、大学生の中退率が高いことが課題となっているが、教職員だけでは十分なケアができないため、チューターによるサポート(=ピアサポート)が普及。CRLA(College Reading & Learning Association)という教育研究学会によって、学生同士の学び合い、助け合いをプログラム化したITTPC(International Tutor Training Program Certi cation:国際チューター育成プログラム認定)という教育認定制度も整備されている。 では、日本ではどうか。国内の大学においても、学生の学力不足やキャンパス内での孤立を原因とする中退は深刻。この課題に対してのピアサポートのニーズも大きいが、加えて、日本独自のもう一つの課題として、主体性を養うキャリア教育が、特に今、強く求められているという事情がある。 例えば、米ギャラップ社が世界のビジネスパーソンを対象に実施した調査によると、日本の企業では、従業員の組織に対するエンゲージメントが139カ国中132位と極端に低い。一般的に、日本人は「言われたことを忠実に実行する能力は高いが、組織にコミットする主体性に欠ける」といった評価をされることが多いが、それを如実に示すデータだ。教育機関などへの経営・組織改善コンサルティングやコーチング、ピアチュータリングなどの導入コンサルティングを手がける株式会社Weness代表取締役社長の伊藤太氏(一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチ、コーチング心理学学会認定サイコロジカルコーチ)は、その原因について「日本の減点主義的な教育が、日本人に受け身なマインドをすり込んでしまっていることにある」と指摘する。この課題を解決するための効果的な手段の一つとして、大学におけるピアサポートが、今、注目されているのだ。 では、なぜピアサポートなのか。伊藤 ピアサポーターが支援するメリット図1取材・文/伊藤敬太郎学生同士がお互いに学び合い、助け合うピアサポートが、今、日本の大学の学習サポートやキャリア教育においても導入され始めている。コーチングの専門家や教職員ではなく、同じような立場の先輩や仲間が支援するこの仕組みには、どのような効果があるのだろうか。ピアサポートのメカニズム、キャリア教育との関連性を探る。上からの指導になりやすい専門家・教師敷居が高い話しやすい身近なロールモデルになるピアサポーター自身の成長同じような立場で一緒に考えることができるピアサポーター支援される人

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